失われた週末のレビュー・感想・評価
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無条件で肯定してくれる人の存在
『アパートの鍵貸します』に続き、ビリー・ワイルダー監督の作品ということで鑑賞。
彼がアルコール依存症になった原因は、自己肯定感の喪失なのだろう。大学時代天才と言われるほど小説の才能があったドン。そんな彼が、いざ小説家になると中々筆が進まない。そこから立ち直れたのは妻ヘレンの献身による。そう考えると、彼のアルコール依存症の治療に必要なのは、病院や療養のための旅行以前に、無条件で彼を肯定してくれる人の存在だったのだろう。
アルコール依存症に陥り自分を否定するドン。そんな彼に対して、ヘレンはありのままの彼を受け入れ続けた。そういった男女の愛情を描けているのが秀逸な映画。
困ったときのワイルダー
アルコール依存症の男がどうしても酒の誘惑から抜けることができない、というだけの話をここまで興味深く引っ張ってゆけるのはさすがワイルダー先生の脚本と演出の技でしょう。後期の喜劇群が有名ですが初期はシリアスな作品の方が多いようです。
要するに何を撮らせても圧倒的な水準、観る者に迷ったらヒッチかワイルダー、格言です。
初回の試写会で評判悪く、酒類関係者から圧力を受けたりでさすがのワイルダー先生もノイローゼになったそうです。何とか公開したところ、大好評、大ヒットでめでたし、めでたし、のエピソードがあります。
数々の映画賞を総なめにしたのも当然の傑作です
さすがはビリー・ワイルダー監督
ハズレなし
脚本、演出、主演の演技
三拍子揃った傑作です
特に主演のレイ・ミランドの迫真の演技は、後半になると鬼気迫るものとなります
不安を象徴する音楽が秀逸
テルミンという世界初の電子楽器だそうです
空中で手を動かして演奏するSFチックな楽器です
大昔、NHK FMの現代音楽の時間でたまにかかってなんだろうふしぎな音だと思ったものでした
こんな昔から映画に使われていたとは知りませんでした
小道具と魅せ方の天才
この作品で、カンヌ、アカデミー、ゴールデングローブを全て受賞したレイミランドすげーーーー
それも大納得の演技力。
初めのシーンからラストまで、いっときも目を離すことなく、観ていられる。
最初の窓の下に瓶があるシーンは、なんだかヒッチコックを彷彿とさせましたな。
アルコール依存症の人間の弱さを描いたワイルダー監督の重厚な人間ドラマ
喜劇の名手として師匠のルビッチ監督と共にアメリカ映画の歴史に名を遺すビリー・ワイルダー監督の初期の代表作。評価の高い「熱砂の秘密」(未見)「深夜の告白」に続くシリアスドラマで、5年後の名作「サンセット大通り」でも観られるように、アメリカ映画の特徴より脚本家デビューしたドイツ映画の暗く深刻な演出タッチが支配する。喜劇の演出は「七年目の浮気」を例外として、ジャック・レモンと組んだ「お熱いのがお好き」「アパートの鍵貸します」からで、監督キャリアの前半は喜劇作品ではない。喜劇の脚本が書けるから演出もできるのではないことや、シリアスな演出の土台があってコメディが描けることなどが考えられる。
レイ・ミランドに関しては、ヒッチコック監督の「ダイヤルMを回せ!」やアーサー・ヒラー監督の「ある愛の詩」しか観ていないが、このワイルダー作品が一番の代表作に違いない。作家になる野望に挫折した青年のアルコール依存症を巧みに演じて、その精神的に追い詰められる切実感が見事に表現されている。ワイルダー監督のカットバックを使用した演出が、その緊迫した数日間を重厚な人間ドラマに創作している。シニカルな視点を超えたワイルダー監督の人間愛が、人間の弱さを描き、本物の悲哀に到達した傑作と言っていいと思う。
1983年 9月13日
傑出したビリーワイルダー演出
アルコール依存症の主人公の程度が
徐々に進み、終いには盗み~自殺に対する
抵抗力さえも失い堕落するが
ラストで恋人の献身でようやく立ち直りの
切っ掛けを得るという、
たったそれだけの話で、
ともすると平板な映画になりかねない
ストーリーだが、
流石にビリー・ワイルダー、
ラストまで全く緊張感を途切れさせること
なく描ききっていると思う。
女優賞を除くアカデミー賞主要4部門獲得
に納得の内容だった。
ワイルダー作品では
「情婦」「アパートの鍵貸します」
が特に好きだが、
数十年ぶりに観たのこの映画も2作品に肉薄
していると再認識した。
ワイルダー作品は
「お熱いのがお好き」「七年目の浮気」等々内容自体はあまり好みではない作品
もないではないが、これらの作品も
脚本と演出力なのか、
上手な映画だなと思わせてはくれた。
「失われた週末」もアルコール依存症
(薬物・ギャンブル等の依存も同様に、
なのだとは思いますが)啓発の社会提言
の内容と相まって、
その監督の力量が充分に発揮された作品
になっていると感じた。
失われた希望
寝ても覚めてもアルコールの事を考えてしまう。
兄弟も恋人よりもお酒。
しかし、虎の子のタイプライターを質に入れようとするが休日のためにできない。
さらに、飲み屋で女のハンドバッグから金を盗もうとするが捕まることもなく失敗する。
救いがないように見えて、生まれ持った天賦の才によって周りの人間、そして運命にも見放されていない男。
幻覚シーンの描写は甘いが人物の心理描写と絶妙の音楽センス。
もし、時代が違ってハッピーエンドでなければどうなっていたんだろう?
90点。
自己破滅型人間に垣間見えるもの
ダメ人間。あぁっ・・・いいなぁ。
望みがなくて本っ当に好感がもてる主人公。
共感とはまさにこの事である。
好感がもてるのと同時に憎悪も抱くという、まるで自分を観ているような・・・こりゃ一体・・!?
「ウン、わかる、わかるよ~~。」
瓶を隠しておいたり隠したことを忘れていたり、嘘ついたり隣のひとの財布を摺ったり・・・。
ダメ人間の行動パターン思考パターンはこうも似るものか。
私はアル中じゃないし、財布も摺ったことないけれど。
あいだみつをの無条件全肯定と、ニーチェの肯定は違うとどこかで読んだことがあるがそんな感じだろうか。
時々垣間見える詩的なセリフもとても良かったなぁ。。。
この映画をみた数日後に、図書館のバックヤードに入る事があった。
かなり古い閉架で、戦後進駐軍が置いていった本がドッサリ。
ふと観ると・・「The Lost Weekend」が・・・!オオォ・・!
見つけたときには鳥肌たっちまった~。
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