「理解に苦しむ…」オテサーネク 妄想の子供 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
理解に苦しむ…
日本語のサブタイトルの通り、最初に妄想の子供とつけなければ、見た人が怒り出すかもしれない。
少女が幼い頃から見ていた童話は、一般的には情操教育として子供の世界観を形成する上で役に立つものだが、その世界を中心に現実世界を見ることで、現実世界との混同が起き、この場合、少女の勝手な妄想癖をオドロオドロしく映像化している。
しかしながらこの妄想は少女だけに留まらなかった。
不妊症の女性がまたしても流産してしまうことから、夫も子供がほしいという強い願望が白昼夢を見させてしまうほどだ。
そんなとき購入した別荘の庭いじりで、切り倒した木の根を掘り起こすと、その姿が赤ちゃんに似ていたことで、彼はちょっとした彫刻を施し妻にプレゼントする。
妻はその人形を痛く気に入り、感情移入させるとまるで本当に赤ちゃんが生まれたかのように生活し始めた。
最初の頃は夫も喜んでいたが、妻の感情移入は異常さを増す。
やがてこの人形に命が吹いこまれたようになるが、それは少女が読んでいた童話の内容と酷似していることに少女は気づく。
問題は、夫婦間のゲームとも呼べるようなままごとと、少女の読んでいた童話「オテサーネク」が同一化され、それが現実化され、木の根が、飼っていた猫、郵便配達員などを次々捕食していくという設定だ。
簡単に言えば、童話こそが聖書並みの預言書で、それが現実化していく過程を、最初は妄想癖というスタンスで映像化しているが、実際にその出来事は起きているという設定になっていくのだ。
オチはなく、アパートの管理人のおばさんが、童話のように鍬を持って木の根を切り倒そうと地下へ行くシーンと、やめてと泣き叫ぶ少女の悲鳴で終わっている。
多少作品に寄せた見方をすれば、幼いときの純粋なモノの見方を、大人が力づくで矯正しようとする昔からの人間社会を描いていたのかもしれないと感じた。