「ジャッキーが、飛んでイスタンブ〜ル〜♪」アクシデンタル・スパイ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャッキーが、飛んでイスタンブ〜ル〜♪
WOWOWの放送にて。
監督はテディ・チャンということだが、製作・主演であるジャッキー・チェンの意向が画作りに大きく作用していると思う。
オープニングのトルコシークェンスで、やって来た取材クルーの車を追っていた画面が少年の姿に切り替わる。その子が住民たちに向かって大きな声を上げると、その子が向く方向にカメラがパンする。そして画面は住居や住民たちへと切り替わっていき、その場所の様子を一気に見せる。
ジャッキーがはじめて登場する運動器具店の場面では、ジャッキーの顔を見せないように工夫した構図とカメラワークで主役の登場を演出する。
ショッピングモールの場面では、武装した警備員を追って動いていたカメラは、チラシを配る男→チラシを受け取る女の後ろ姿→こちらにやってくるシャッキー→チラシを配る男とジャッキーの接触→チラシを受け取ったジャッキーが画面奥へ、と被写体が移り変わる計算されたワンカットが見られる。
警備員も女もジャッキーも歩いて移動していて、チラシを配る男だけが立ったまま動いていない。だが、カメラがジャッキーを追っている間にチラシ男の立ち位置を変えていると思われ、不思議な感覚になる。
このあと、ジャッキーがその場の怪しさに気づくことになるのだ。
これら、映画の導入部で展開するアクションではないシーンなのだが、ジャッキー・チェンの映画的描写術が反映しているものだと思う。
ストーリーのディテールはさておき、相変わらずバラエティに富んだアクション、アクション、アクションの連続が息つく暇なく畳みかけてくる。
貨物エレベーター、病室、トルコの蒸し風呂での小道具を駆使したバトルから、カーチェイス、アキラ100%を凌駕する裸芸まで。
そして、前半には巨大クレーンの、最後には炎上暴走タンクローリーのスペクタクルが、これぞ映画的スケールで展開する。
シャッキー主演の香港映画では珍しい悲劇のヒロインを演じているのはビビアン・スー。
日本のバラエティー番組で魅せるキュートさとは少し違う、悲しげで儚い美しさを醸し出している。