「変革は浮かない顔で」私の20世紀 masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
変革は浮かない顔で
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チャーミングで風変わりな『心と体と』が気に入ったので、寡作で名前も覚えにくいイルディコー・エニェディ監督の他の作品を検索したところ、わずかに本作だけがフィルモグラフィに記録されていた。偶然にも、とある映画専門チャンネルで最近になって放映されていたため、早速録画して視聴。
物語は、1880年、エジソンによる電気の発明セレモニーから始まり、同じくエジソンの電信技術の開発イベントで幕を閉じる。メインとなるのは、リリーとドーラという孤児で双子の姉妹の数奇な人生であり、エジソンはこの二人の主人公たちに全く絡むことはない。
電気は暗闇を照らし、電信技術は世界を狭くした。が、リリーは革命運動に身を投じ、ドーラは男たちを手玉にとってしたたかに生きているため、光の差さないところ、人と過度につながらないところを生きている。
文明がどんなに進もうと、人は動物を軽んじ、男は女を軽んじる。リリーとドーラに偶然出会う紳士も、二人の違いに気付くことなくそれぞれを求め、二人の人間性などお構いなしである。
冒頭と終末に登場するエジソンが、世紀の大発明の瞬間に変わることなく浮かない顔をしているのは、さもありなんというところか。私たちの20世紀は、本当に輝かしい進歩の歴史を刻んだのだろうか、とでも言わんばかりに。
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