「神との契約」わが命つきるとも REXさんの映画レビュー(感想・評価)
神との契約
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「王の僕の前に、神の僕である」
トーマス・モアの主張は、一神教を擁しない日本人にとっては、融通のきかない頑固者としてしか目に映らないかもしれない。
しかし、彼は敬虔な信者という立場からというよりも、イングランドの行く末を案じる一人の政治家としての立場から、王への拒絶を強めたのだと思う。
国王が教会に圧力をかけて再婚を認めさせるということは、カソリックの教義をねじ曲げるということと同じことであり、それは宗教で統制している国民の道徳心や倫理観を揺さぶることにもつながる。
もちろん私は、それほどまでして守らねばならぬほど宗教が大切だとは思えないし、国主が禁忌を破ったからといって、自分の倫理観が崩壊するほどの衝撃を受けたりはしない。
それは生きている時代と国と人種が違うから言えることであって、この時代に身を呈して権力におもねらず死を選んだトーマス・モアの覚悟は、やはり凄いことだと思う。
それよりもあの手この手で彼を凋落させた取り巻きどもの執念に呆れる。モアは政界を下野して平民に退いているのだから、本来であれば放っておけばいいものを、王ヘンリーの執着と嫉妬がそれを許さない。
逆説的に、モアがいかに高潔だったかが伺える。
ヘンリーは一番信頼できる人物を、みずから殺してしまったと言えますね。
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