「伝説の英雄の多角的な捉え方」ワイアット・アープ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
伝説の英雄の多角的な捉え方
総合75点 ( ストーリー:80点|キャスト:75点|演出:75点|ビジュアル:80点|音楽:70点 )
腕利きの保安官が無法者をやっつけるという勧善懲悪な世界が描かれることが多い西部劇において、ワイアット・アープとOK牧場の決闘いえばその象徴的存在である。だが悪を倒す派手な決闘ばかりが取り上げられるのには飽きもあるし、美味しいところだけを取り上げて単純化されすぎたという印象は拭えない。
この作品は彼の人生を闇の部分も含めて幼少期から老齢期まで描いていて、英雄視されている男の違う面がいくつも見られる。彼は自暴自棄になって酒に溺れて強盗をやったり、長く自分に尽くしてくれた女を捨てて違う女を選んだり、強引なやり方で町から嫌われたりで、一般に思われている英雄像とは大きく異なる。その点では西部劇の銃撃戦というよりも、西部開拓期を生きたアープ個人の現実により迫った物語である。単純な銃撃戦や一方的な正義の味方がかっこよく活躍するだけの単純な話は巷に溢れているので、このような多角的な捉え方は新鮮で私には好ましかった。
伝説の西部の英雄の負の面を積極的にたくさん見せてしまったせいか、あるいはわかりやすい派手な戦いにいくまでとその後が長かったせいか、残念ながら世間の評価は低くてラジー賞を受賞してしまい、興行収入も惨敗。ケビン・コスナーの評価をさらに下げてしまった。またアープの負の面を描くといっても主人公中心の目線で描かれていて、なんとなく格好つけているというか憐れむべき悲劇の人っぽい立場になっているように感じる部分があって、素直に演出を受け入れられないところがあった。このあたりは悪い意味でケビン・コスナーらしい。