「悲劇に見舞われただけで敗者ではない」浮き雲 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
悲劇に見舞われただけで敗者ではない
アキ・カウリスマキ監督の敗者三部作の一作目。
カウリスマキ監督はちょっと苦手そうで今まで余り見てこなかった。ある程度有名で、名前は知っていても観ていない一番の人かもしれない。
感情的でない演技の演出は妙に平坦に感じさせるシュールさがあり、これがカウリスマキの特徴かと一目でわかるのだが、物語のせいなのか、はたまた巧妙に仕組まれた演出なのか、自分には分からないけれど、不思議と心地良さのある温かさを感じた。
物語の締めくくりが気持ちよい作品が好きだ。ただのハッピーエンディングではなく、いわゆるビタースイートと呼ばれるような、最後だけフワッと上がるものだ。最高の結果ではなくとも良い未来を感じさせてくれる作品だ。
この作品の中の、連なる悲劇の向こうにある人の優しさと希望は正しく自分が求めているものだった。
難解そうだし苦手かもと思っていたアキ・カウリスマキ監督は、もしかしたら自分の好みかもしれない。
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