「映像200点、音楽80点」ローリング・ストーンズ・アット・ザ・マックス moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)
映像200点、音楽80点
フルサイズのIMAX劇場にて鑑賞。とにかくすごい物を見たという興奮。なぜなら、今のIMAXの劇場でかかってるほとんどの映画やライブですら、IMAXフィルムを使うのに金と苦労(カメラが超でかい)がかかりすぎるから実はあとからIMAX用にデジタルで引き延ばしているだけ。本当に全編IMAXカメラとそのフィルムを使っている映画はまだない。来年のクリストファーノーランの新作が初めての作品になる。
なのに、この35年前のライブがほぼ全編IMAXカメラで撮影されていただなんて・・。(当時のIMAXカメラは撮影できる時間が短かったため、フィルムの入れ替えの関係で、ビデオ撮影が6分ほどあるのだが。)しかもその数、8台(!)・・現代のオーパーツである。
しかもこの当時、IMAXの一般劇場は無い・・。これはもちろんローリングストーンズという超大物だから出来たことだ。それにしても、・・これがどれだけ価値のあることか当時はまだわからなかっただろうに、そこに巨費を投じたストーンズは先見の明ありすぎ・・。
とにかくストーンズに限らず、こんな鮮明な映像で90年代のコンサート映像を見たことはもちろんない。観客の後ろのほうの人までみんなの顔がはっきりと見える、ある意味異常な映像だった。NHKが開発した90年代初期のハイビジョン映像をたまにYoutubeで見ることがあるが、あれと同じような時代のタイムカプセルとしての価値だけで、もう十分すごい。巨大なライブセットと照明も素晴らしかった。
で、やっとここから音の話になるが、ストーンズのライブとしては・・悪くはない。悪くはないが、彼らのベストではない。なぜならジャンピンジャックフラッシュも、ギミーシェルターも,ミス・ユーも映画の上映の長さの都合からかカットされちゃってる・・また、巨大なツアーに疲れているビルワイマン(他のメンバーが40代半ばの時に、当時既に50を過ぎていた。数年後に脱退)の義務的な演奏もちょっとつらい。
再上映のためにミックスは変えられるはずだが、なぜかベースの粒も聞こえにくくつぶれていて、小さめの出力になっており、キースのギターとチャーリーのドラムが目立つバランスになっている。音のレンジが狭く、現代のライブ音源と比べると低音の迫力が若干欠ける。
だが逆にそのことで、ワイマン在籍時から「スタジアムバンドとしての」ストーンズのグルーヴを構成していたのはベースパートではなく、高中音のキースのギターリフとチャーリーのドラムだったんだなと改めて確認できる。
また、この当時からあった批判だが、この時期のストーンズ、不健康な生活からは足を洗い、特にミックは肉体改造(マッチョと言うよりもアスリートのような持久力を身に着けた)を始めた時期であり、そのスポーティーさが元々あったストーンズのルースなグルーヴとはことなる「エネルギッシュでハイ」な演奏になっており、好みが別れるところだとは思う。私も好みで言うとスコセッシが監督した「シャイン・ア・ライト」ぐらいのもう少し枯れてからの溜めのある演奏のグルーヴのほうが後期のストーンズの演奏としては好きだ。
ちょっと後半色々サウンド面で言いたいことがあったので、批判めいた内容になってしまったが、基本的には大満足な作品だった。あ、あとその後仕事あるからビール飲みながら見れなかったのが残念だったw
