劇場公開日 2025年8月15日

「ポール・シュレイダー脚本のベトナム帰還兵シリーズ」ローリング・サンダー(1977) カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ポール・シュレイダー脚本のベトナム帰還兵シリーズ

2025年8月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ベトナム戦争で長い間捕虜として拷問を受け続けるとトラウマにより通常の生活は送れなくなってしまう、というのを「ディアハンター」や「タクシードライバー」「ランボー」など多くの映画で我々は知るのだが、本作も例に漏れず帰還後の無気力感と家族との溝、さらには自暴自棄と戦争への渇望の念で再度戦いの場への向かってしまうという男の話。

脚本のポール・シュレイダーは最近でも「カード・カウンター」で同様のベトナム帰還兵を描いているが、この世界観に取り憑かれているこの人自身にこそ異常さを感じるw

主演のウイリアム・ディヴェインは、自分的には、70年代に活躍した役者で子供の頃に観た映画にたまに出てくる毛深く男臭い俳優さんというイメージ。
本作では冷静沈着なエリート軍人に相応しい貫禄と佇まいで、部下に慕われるのが納得いくほどカッコ良い。
妻子の復讐ではなく、ただ戦いたいという気持ちを感情無く見せる演技はさすがである。

部下ジョニー役のトミー・リー・ジョーンズも若く(当たり前だけど)、帰還後の居心地の悪さと上官への忠実ぶりを軽いフットワークで上手く表現している。

監督のジョン・フリンは「摩天楼ブルース」の監督だとは全く知らなかったが、死ぬかもしれないけど何か?みたいな感じでメキシコに行き壮絶な銃撃戦を繰り広げる展開は「ワイルドバンチ」を思わせ、ペキンパーが監督だったらどんな感じだったかなあとつい想像してしまった。

当時のテキサスで戦争帰還兵の自宅を襲撃しようとする強盗団の勇気も凄いが、かぎ爪で股間を攻撃された奴が数時間後には普通にしてる回復力の凄さには驚ろかざるを得なかった。

カツベン二郎