「「自分はジャン・ヴァルジャンでコゼットだ」」レ・ミゼラブル(1995) talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
「自分はジャン・ヴァルジャンでコゼットだ」
ベルモンド傑作選のグランド・フィナーレにこの作品があって感謝です。「レ・ミゼラブル」をこれほど大胆に複層的に再構成した映画を見ることができて嬉しく感動しました。ベルモンドが三役を演じ、彼の舞台俳優としての素晴らしさを肌で目で耳で感じることができました。
ベルモンドの役は文盲ゆえ、「レ・ミゼラブル」をもっと読んでくれとせがみ、文字が読めるようになって牢獄の中で今度は一人で読み「コンマ」「ピリオド」とその都度、丁寧に声に出す姿は、涙なくして見ることができませんでした。「文字の読めない庶民が善」「無学こそ善である」はイタリアのマンゾーニの「いいなづけ」にも通底している考えのようです。
国民国家も大文字書きの文学史も批判の対象となって久しく、今では大時代的で古臭いのかも知れない。でも国民文学、「大きな物語・小説」の古典があり誇りにしてそれを学校で必ず勉強する機会が与えられている国を、素朴過ぎるとは思うけれど羨ましく思いました。フランスが「レ・ミゼラブル」なら、イタリアには「いいなづけ」、スペインには「ドン・キホーテ」があり、英国にはシェークスピア、ドイツにはゲーテ、シラー、トーマス・マンがいるんだなあと。体力と視力は大丈夫かと思いつつ、古典の再読を夢想しました。
おまけ
「愛と哀しみのボレロ」を監督したルルーシュだから、いろんな人々が出会い関わり助け合い或いは命を失いという大河ドラマになるんだと納得。第二次世界大戦を背景にすることで、「ああ、無情」が普遍的な誰にも当てはまる「レ・ミゼラブル」という物語になる。古典や国民文学をこのように生き返らせる力が今の時代、とても求められているように思った。
コメントありがとうございます! 僕は最初にベルモンドを観たのが『ボルサリーノ』とかだったんで、『リオの男』を観たときは、こんなに動ける、アクションの映える人だったのかと仰天しました。まさに「外で動いて走ってジャンプして窓から出入りしてという人」ですね(笑)