「侍が海を渡り異国で自分のやり方を通す心構え」レッド・サン Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
侍が海を渡り異国で自分のやり方を通す心構え
総合:70点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
世界の三船出演のハリウッド映画としては『グラン・プリ』『太平洋の地獄』に続く第3作目の作品であり、アメリカを舞台にした作品としては初の作品。その意味で三船が本当にアメリカに進出した最初の作品と言える。しかも侍役である。
ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーンのような当時のハリウッドで最高に人気だった俳優たちと共演したわけではないものの、チャールズ・ブロンソンとハリウッド俳優ではないけど欧州では一流俳優のアラン・ドロンとの共演は上々の成果だ。早川雪洲という偉大な先達もいたが、その後に続く日本人俳優がなかなかハリウッドに進出することが出来ないなかで、遂に三船が後継者となった。
それでこの作品であるが、西部でちょんまげが銃をもった強盗団と対峙しているのは違和感があるが、三船が出演しているだけあって欧米人からみた日本人を押し付けた茶化した内容になっていないところが立派である。今でこそ侍は世界的に有名になり尊敬の対象にもなってきているが、当時の世界は日本に対する理解もなく、まして侍なんて服装も含めてわけのわからない存在だったろう。
その中でも三船は俳優として立派に侍を貫き通したし、その姿はちょんまげの侍が太平洋を渡り勝手のわからぬ異国で自らの矜持を貫く姿とも重なる。自分も昔ろくに英語も出来ず宿泊先もあるのかわからないのにアメリカに自分1人行くときは多少不安だったが、それがこの当時ならば強い精神力がいる。外国の映画会社の好き勝手に流されることがないその三船の心構えは賞賛出来る。その後のハリウッド映画にも、欧米人が考える日本人像を変な演じるようにしたものがいくらでもあるが、三船は違った。
悪人だが有能で行動力と男気があって、徐々にそんな三船の侍魂に共感するチャールズ・ブロンソンは魅力的だ。美男子ながら平気で仲間を裏切り次々に人を殺していくアラン・ドロンもその残虐さゆえの存在感があった。
演出・脚本もこの当時なりのものではあるが、それなりに健闘しているの思う。