「ぼろ布のような美女(視覚と嗅覚の魔術)」反撥 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
ぼろ布のような美女(視覚と嗅覚の魔術)
1965年(イギリス)監督:脚本:ロマン・ポランスキー
主演のカトリーヌ・ドヌーブ。
この時、22歳になったか?ならないかの若さ。
キャロル(ドヌーブ)は一度も笑わない。
美しいキャロルには、男の視線さえ疎ましい。
男性恐怖症みたいで、その癖、男に襲われる妄想(過去のトラウマなのかは不明)に、
震えておびえる。
おびえたウサギのようなキャロルは、言い寄ってくるコリーが苦手。
見るからにハンサムで好感持てる青年なのに。
キャロルが決定的に壊れていく原因は、
《姉の不在》
多分、キャロルは脅迫神経症だと思うけれど、庇護者である姉が、愛人とイタリアへ旅行に行った。
ひとりで過ごす時間。
妄想が次々と襲って来る。
《視覚の異常》
部屋の壁がひび割れる、
壁から伸びる手、
鍵穴から見える歪んだ視界、
ヤカンに映る歪んだ自分の顔、
《音も不快》
修道院の鐘の音、
蝿の羽音、
電話のベル、
部屋の呼び鈴、
適切な精神科の治療が必要だった・・・そう思う。
カウンセリングと投薬・・・それを受けていればここまで悪化しなかったと思う。
腐って行く「ウサギ肉」
芽が出て、萎れて鄙びて行く「ジャガイモ」
日に日に荒れて行く汚部屋。
ポランスキー監督の描写は容赦がない。
美しい花(キャロル)が、萎れて、腐って、壊れて、汚臭を放つ・・・
精神が崩壊して行く様を最後の最後まで凝視する。
アパートの住民(死にかけたような老人たち)の好奇の視線。
珍しい生き物のようにガン見する老人たち。
瀕死のキャロルを大切そうにお姫様抱っこする姉の恋人。
邦題の「反撥」
命名者の意図は不明だが、とても似合っている。
コメントする