「俺の戦争は終わっちゃいない!」ランボー kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
俺の戦争は終わっちゃいない!
Blu-rayで観賞。
最新作観賞に備えて、復習。
シルヴェスター・スタローンは、スタジオシステム崩壊後のハリウッドにおいて、ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグと並ぶ功労者だと思う。
『ジョーズ』『スター・ウォーズ』と前後してヒットした『ロッキー』は、アメリカン・ニューシネマの台頭によって低迷期にあったハリウッドにサクセスストーリーのエンターテイメントを取り戻したのだから。
だがこの『ランボー』は、1982年の作品でありながらアメリカン・ニューシネマに近いところがある。
主人公は決して正義の人ではなく、反体制の暴走が抑えられず破壊行動を増長させていく。
精神的後遺症を抱えたベトナム帰還兵を戦争被害者として捉えれば、ベトナム戦争批判のテーマ性という面でもニューシネマに通じるものがある。
原作小説のようにランボーが殺される最後だったなら、よりニューシネマ的な破滅の美学となっただろう。
とはいえ、町の保安官はランボーを帰還兵と知って排除しようとしたわけではなかったし、
訪ねた戦友の母親が少し迷惑そうなそぶりを見せはするが、町の住人がランボーを迫害するような場面もない。
ベトナム帰還兵が差別を受ける状況は、ランボーが投降する直前にトラウトマン大佐に悲惨な体験を語る長い台詞によって、初めて訴えかけられるだけ。
既に「ディア・ハンター」「地獄の黙示録」で戦場が人を狂気にさせることは描かれていたが、帰国した兵士の境遇にスポットを当てたことは特筆すべきで、しかもスタローンが色っぽいだけに、一部のベトナム帰還兵たちからは歓迎された。
社会への問題提起としては、後の「7月4日に生まれて」に全部お任せして、純粋に人間兵器と化して大暴れする元グリーンベレーのランボーというキャラクターとそのアクションを楽しめればヨシの映画だ。
見所はなんと言っても、ランボーの戦いぶり。
森の自然環境を利用して、たった一人で警官や州兵たちを撹乱する。罠を仕掛けて敵を倒すのは、後続のシリーズでも定番となった。
そして、スタローンの肉体美。
頬がこけた表情は精悍で野性味に溢れている。
同年に公開された『ロッキー3』で、ヘビー級タイトルマッチに「まるでミドル級だ」と言われるほど身体を絞ってリングに上がる役作りの成果だろう。
この映画のアクションでは、絶壁から林へダイブするシーンがあまりにも有名だが、ランボーがバイクを奪って逃走するパトカーとのチェイスが凄い。
タンクトップ姿で道なき道を疾走するスタローンはプロテクターを身に付けていない。
『大脱走』のマックイーンも真っ青ではないか❗
保安官を演じたブライアン・デネヒーの悪役ぶりが、また良い。
原作小説にあった彼(保安官ではなく警察署長だった)の背景は、映画では全く描かれておらず、ただ閉鎖的な田舎町の平穏を維持してきた自信家の保安官だ。
見るからに「俺に逆らうな」と言わんばかりの圧力を放つが、決して不正な人間ではなさそうな雰囲気もある。
保安官が州兵の将校に命令できるのには驚いた。
主人公を死なせなかったのは、後のシリーズ化を目論んでいたからかどうかは知らないが、スタローンはベトナム戦争の悲劇を本気で訴えたかったようだ。
コメントありがとうございます。
「リトルランボー」という作品をご覧になりましたか? 子供たちがランボーを再現するのですが、小さな鱒男に思わず噴き出しそうでした。
コメントありがとうございます!
メッセージ性を最後のシーンに全振りしたかのような構成は見事でしたね。観終えた後なら、そういえばあのシーンは匂わせだったなぁ、とか分かるのですが、「とにかくスタローンのアクションを見てくれ!」と言わんばかりの潔さが最高でした。
保安官偉すぎてビックリですね(笑)
共感ありがとうございます。
この第一作は尋ねた戦友は枯葉剤で亡くなってたり、英雄のつもりが冷遇されてたりと続編で深掘りされなかった要素が沢山有りましたよね。二作目以降は唯一人生き残った人間兵器みたいになっちゃって・・鱒男さんは上官なので、仲間みたいな存在が居なくなってましたね。
イーストウッドよりスタローンみたいなこと言ったくせに早速なんなんですが、ランボーシリーズは1作目からのシリーズ作の変化についていけませんでした!なので4、5作目も実は今さらランボーって言われても…って感じで見ていないのです。(そのうち改めてシリーズ見ていこうと思っています)
ロッキーはシリーズの変遷もすんなり受け入れて楽しみましたし、「クリード」シリーズの企画出されたときはヤられたと思いました。
美奈さんとのくだりは鑑賞済みです!なので飛雄馬が今現在野球への情熱を失ってどうなるのかな?なんて思っていたら一徹が中日のコーチに就任しオズマを獲得する話になっているところです!
美奈さんとの悲恋も良かったのですが、その前の橘ルミとの関係も好きです。ウブな飛雄馬が彼女にただ振り回されのではなく、飛雄馬としても青春を模索すらための打算ありきの相手であるというのが、かなり進歩的ですし、最後は互いの仕事へ掛ける情熱を尊重し別れるのも格好いいなぁと思いました。
話数でいうと105話まで見終えたのですが、ここまでほぼダレる事無く見られています。ここまでよくもまぁ面白い話を立て続けに見せてくれるよなぁと感心しきりです。
kazzさん、今回はこちらに失礼いたします。
良いですよね。ランボー。私も好きです。
単純なアクション映画としても楽しめますが、歓迎されない帰還兵の悲哀を上手く演出して作品にもう一つ味わいが加わっているのが好きです。州兵というものを知ったのもこの映画でです。
また映画製作者としてのスタローンは個人的にはクリント・イーストウッドより好きです。企画する映画がなんかツボに刺さります。
梶原一騎作品って流石に「破滅の美学」の部分こそ廃れてしまいましたが、丈の力石への拘りや、花形の飛雄馬への拘りのようなライバル関係を中心とした登場人物たちの関係性の作り方という部分は今の漫画にも脈々と受け継がれていると思うのです。
特定の相手への拘りが軽く恋愛絡みの愛憎劇の域に達しているように見えるので、その要素が今は少年より特定の嗜好を持つ女性ファンを惹き付けているようではありますが…。それにしても今の漫画にも梶原一騎的な要素を発見してはその偉大さに驚かされます。
映画は小説や漫画、テレビや音楽等の他分野とも今や切っても切れない関係だと思いますので、映画を通して他分野への言及をされているものを読めるのは私も嬉しいです。(自分が映画にかこつけて他分野の事も語りたいというのもあるのですが…)こちらこそありがとうございます!