「青春の輝きは一瞬だけのカラー」ランブルフィッシュ Garuさんの映画レビュー(感想・評価)
青春の輝きは一瞬だけのカラー
学校をドロップアウトするような不良には、高いポテンシャルを秘めた輩が多かった。 アイツがもし本気で勉強をしたら・・・、 全力で運動に取り組めば・・・。 子供の頃は神童と呼ばれていたのに…。 相当な才能に恵まれていることは皆が知っているのだが、 家庭環境のせいか感性の鋭さが原因なのか、なぜか道を外れてしまう。
この作品でミッキー・ロークが演じるバイクボーイは、まさにそういった「泥の中の黄金」を象徴する存在として描かれている。 切れすぎる頭脳と透徹した感性を持つが故に、無常観に侵されてしまったかのような不良グループの伝説のリーダー。 この役を演じられるのは、 カッコよさだけでなく、実はかなりの演技派であるミッキー・ロークをおいて他にはいなかっただろう。
そして、そんな輝きを纏った兄に憧れる弟役が、当時の青春トップスター、マット・ディロン。 ディロンのチンピラ高校生が、板に付いていて実にいい。 そのほかの出演陣も、デニス・ホッパー、トム・ウェイツ、ダイアン・レインなど、豪華で個性的な面々ばかりだ。
一番の魅力はやはり、時代錯誤のモノクロ映像。
白黒の世界の中に兄弟を描くことで、 物語と観る者との間に距離が生まれているような気がする。 コッポラは、あえて登場人物に感情移入させず、 観客に少し引いた画で見せようとしたのかもしれない。 それとも、バイクボーイの虚無感を感じさせようとしたのだろうか。 いずれにしろ、素晴らしく魅力のある映像だ。
鮮やかなランブルフィッシュだけがカラーで映し出される場面は、 若さ故のコントロールできない激情を象徴しているように見える。 モノクロで塗られた青春時代の輝きは、ほんの一瞬だけ鮮烈なカラー映像なのだ。 それが、とても美しく、せつない。
もう一つの魅力は、ポリスのドラマー、スチュワート・コープランドの演奏。
全編を通して流れる乾いたパーカッションの響きは、 強烈に映像を補完する。 同時に、時の流れを可視化してしまうような、不思議な効果を生み出している。 若さに縛られた二人の姿は、 コープランドの奏でる独特の音により、一層刹那的に感じられてしまう。
コッポラらしくない実験的な映画と見る向きも多いが、 私は見事な青春映画だと思うし、 大好きな作品だ。