ラ・ファミリアのレビュー・感想・評価
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ムッソリーニを生み出した土壌
イタリアのローマのブルジョア家庭の
長男カルロの生誕から晩年までの人生から見える世相を描く
(二つの大戦を経験)
祖父は元文学部教授、父は教育省の役人、自身は教師
息子は図書館勤務…という形で沢山の本に囲まれながら家系を継承してゆく
映像は室内から一歩もでないが
時代の変遷は感じられる
ムッソリーニの影も見え隠れする
祖父の愛する詩人は放校後の彼を受け入れた学校の創立者カルドゥッチ
ローマ進軍と反ファシストの従兄弟のパリ亡命
カルロの息子の乗り回す玩具の自動車はフィアットのようだし
(創始者はこの時代に財閥の基礎を築く)
カルロより体力があり感受性の強い弟はファシストに入党し
アフリカにゆき鬱状態に
従兄弟はスペインで戦死
若いアドリアーナを演ずるジョー・チャンパが魅力的
踊る姿を見てカルロが恋に落ちるのがわかる
長男はハンガリー移民と結婚し
長女は変革者(?)と結婚して離婚
彼等の息子の部屋には革命家のポスターも…そして放浪の旅に
映画には直接描かれないが
1924年にファシストに暗殺されたマッテオッティが
〈この国は社会主義的だった、ただし社会主義にはこの国をどうすればよいかわからなかった〉と、言っているのだが
内紛と静観に終始したカルロがそのイメージだろうか?
文学とオペラ、フィアット、家族主義みたいな国柄などによる精神文化から掘り下げているようだった
アドリアーナを演じたチャンパ、アルダンは華やかですが
ベアトリーチェのサンドレッリの方にイタリアの伝統的な美を感じました
ムッソリーニがやっぱり「愛国婦人会」なんかを組織しているから
アドリアーナがフランスに行ってしまうのもわかる
ファシスト嫌いのカルロも彼女の飛躍を望まない
なのに(自分の為に)娘の結婚に反対し自立を奨励したりして
二人と揉めるのが可笑しかったです
「家族」の範囲が広いイタリア
罵り、喧嘩、皮肉、かみ合わない議論、父と娘の言い争い、ビンタ、磁器や陶器を割る!と賑やかで騒々しく、ピアノと歌と朗読と絵画に伴走されて、一人一人が個性豊かな家族が織りなす生の絨毯。その中に散りばめられていることばが星のようでもありナイフのようでもあり美しかった。
大きなお屋敷の中の長い廊下。その廊下の突き当たりの部屋を開けると家族が揃っている。年寄りはその半分も誰が誰だか知ったこっちゃない。若い人は年寄りを把握しているし、年寄りは小さきゃ孫かひ孫だろうと判断する。カルロが生まれたお祝いの家族集合写真で映画が始まり、カルロ80歳の家族集合写真で映画が終わる。
子どもに対しては親としての厳しい顔と言葉。夕食抜きのお仕置きとして子どもらを寝室に追いやってから、大人達だけのダイニングでみんな大笑い。この箇所が私はとっても好きだ。
生まれて成長して勉強して恋をして仕事を持ち結婚し子どもが生まれ、祖父や親や叔母達や配偶者が亡くなり、子どもが大人になって生命が紡がれていく。説教くさい台詞も感傷も蘊蓄も全くない。主人公カルロはじいさんになっても正直で皮肉屋で負けず嫌いで我が儘で優しく魅力的だ。一目惚れの初恋の相手アドリアーナも負けず劣らずきつくて強い。そんな二人の60年以上にわたる付き合いが何だかわかる気がした。
おまけ
映画「ニューシネマ・パラダイス」でアルフレード演じたフィリップ・ノワレ(アドリアーナがパリで知り合ったフランス人役)が出ていました!
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