「文学の薫」ラスト・ショー 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)
文学の薫
こういうアメリカの青春文学のような作品を久しぶりに観て、えも言えぬ懐かしさを感じました。1950年代のテキサスなんてよく知らないのに、実際に彼らがこの小さな田舎町でこんな風に生きていたようにとても身近に感じられました。主人公ソニー(ティモシー・ボトムズ)や親友デュエーン(ジェフ・ブリッジス)をはじめ、登場人物たちがまるで実在の人のように物語の世界に馴染んでいました。とりわけ味わい深かったのが、町で唯一の映画館やビリアード場を経営しているサム(ベン・ジョンソン)でした。元カウボーイの彼には秘めた過去があり、また、古き良きアメリカの良心を静かに守っているような人物として描かれていて、とても魅力的でした。男女間の性的な関係が随所に描かれていますが、さり気なく印象的だったのは、生まれつき口がきけないビリー(サム・ボトムズ)の存在でした。主要キャストではないながら、登場人物の中に彼がいる意味は、当然、原作者ラリー・マクマートリーの頭の中にはあったはずです。怪我をしたビリーのことでサムがソニーらを叱咤するシーンやその後のシーン、そして、いつも路上をホウキで掃いているシーンなどで、人として一番大切にしなければいけないことを大袈裟にではなく、静かに問いかけているように感じました。ピーター・ボグダノヴィッチ監督は、今作の2年後に名作「ペーパー・ムーン」(73)を発表するんですよね。久しぶりに観たくなりました!
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