劇場公開日 1999年7月3日

「映画の本質を見ることができる傑作」ラ・ジュテ moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画の本質を見ることができる傑作

2025年5月9日
PCから投稿

この作品が重要なのは、優れたSFであるとと同時に、映画というメディアの本質を提示している所にあると思う。

今作は、ナレーションと音楽、美しい白黒の静止画の連続だけで演技も活劇も台詞さえも無い。が、我々はこの映画に何かが不足していると感じるよりも、逆に情報が限られている故の豊さに驚くことになる。

イメージの連続とその編集によって物語を紡ぐ→これに一番近いメディア表現は日本の漫画だと思うが、そこに時間軸が足される事で実は映画というメディアは成立しており、それ以外は必要不可欠な本質的要素ではない、という事がこの作品から浮かび上がってくるのだ。

物語には現代の映画的なひねりもあり、映像としても無駄のない引き算の美学というか、白黒の象徴的な絵の連続であるがゆえに、普遍的で古びず、今もそのスタイリッシュさを失っていない。

SF,映画史における傑作であり、短編であるから見るのにも時間がかからないにも関わらず、一般的にあまり知られていない気がするので、未見の方は是非。

ちなみにこれも若い人は知らないかもなので一応メンションすると、テリーギリアムの12モンキーズという映画の元ネタである。そちらも私は好みの作品だが、作品の強度ではやはりラジュテが上だと思う。あと、クリストファー・ノーランは間違いなく今作と、「去年マリエンバートヘ」からの影響を受けているだろう。彼の作品群は娯楽作でありながら、こういった「映画における時間の編集」という彼の個人的な関心が常に盛り込まれている。

moviebuff
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