「『私は大道芸人です。それが好きなんです』」ライムライト マサシさんの映画レビュー(感想・評価)
『私は大道芸人です。それが好きなんです』
『年をとれば命がおしくなる』
『なぜ?』
『生きていることが習慣になるから』
『希望がなくとも?』
『素晴らしい瞬間はいくらでもある。私は死と戦った。君は幸せのため戦うんだ』
『私はここを出ていく。ここにいれば、自分を苦しめるだけだ。残された人生で真実を掴みたい。それが希望だ。それと少々の誇りが』と言いつつ、
『私は大道芸人です。それが好きなんです』と言っている。そして、
『シラノだ。鼻はないがね』と付け加える。
初見は50年くらい前、今日は50年ぶりで二回目の鑑賞だと思う。(3回目かなぁ?)
初見の時、こんなに良い映画とは思わなかった。今、この映画の良さが分かると思う。理解出来るのは嬉しいが、やがて、僕には死が訪れる。それが僕は悲しい。しかし、それが、今実感出来る事が嬉しい。
初見時は、プライドだけで生きるエロじじいの独りよがりって思っていた。加えて、バスター・キートンが添え物の様になっているのが気になった。昔の流行語『あんたは偉い!チャップリン!』と皮肉たっぷりに思った。勿論、劇中劇も面白くなかった。今日の鑑賞でも、彼等の演技には笑えなかった。やはり、映画の中で笑う鑑賞者は、サクラだと思った。50年経って二回目の鑑賞でも、僕の気持ちは変わらなかった。がしかし、実によく泣けた。笑えなかったが、泣けた。そして、チャップリンはそこを表現したかったのでは、と僕の気持ちは落ち着いた。やっぱり、傑作である。
昔の映画は長回しで、きちんとしたバレエを見せる。昨今のダンスはカットを多用して、芸術を加工している。そんなミュージカルが多いと感じ、僕はそんなミュージカルが好きになれない。
男目線のアナクロな表現だが、未だにこんなギャグしか生まれていない事を、悲しむべきかなぁと思った。状況は『男は○らいよ』なのに、チャップリンはこの一作で主人公を殺して終わる。『潔い良い事、風のごとし』一方、『男○つらいよ』は50作も続く。
『街の灯』『モダンタイムス』『ライムライト』は全て『女性を助ける』と言ったテーマがあるようですが、それぞれのパターンがあります。だから、全て見ることをお勧めします。順番は好みですが、『ライムライト』は年をとって見ると実感がわきます。
もう何度見たことでしょうか
小学生の頃からチャップリンは見ていました
当然子供の頃は面白いところをケラケラ笑って見てるだけ
寅さんと一緒の見方ですよね
恋をし、愛とかを知ってしまうと途端に作品を見る目が変わります
そして歳を重ねた今、もう涙が
今これらの作品を見ていない人たちが羨ましいです
何も知らずに初めて見ることが出来るのですから。 でわでわ
マサシさんへ、共感ありがとうございます。
チャップリン63歳のこの時、「独裁者」「殺人狂時代」の作品内容とその他言動によりアメリカでは厳しい状況に置かれていたと言います。チャップリンの平和主義が共産主義に視られて、赤狩りの対象となっていたようです。イギリスでの貧困生活と舞台芸人からアメリカに渡り、映画で成功と名声を得たチャップリンが、そのアメリカから追い出される苦境の背景を思うと、この作品の存在価値も複雑です。淀川長治氏は確か二度目のハリウッド訪問で、映画関係者にお願いして、この作品の撮影現場でチャップリンと再会しています。その時の映画の台詞“時は偉大な作家である”に感銘を受けた淀川氏のお話も感動的でした。この「ライムライト」は、チャップリンの芸人としてのオリジンと成功と挫折を繰り返した人生観が、惜別の境地で描かれたアメリカ映画の遺作になりました。
“Time is the great author. It always writes the perfect ending.”
時が解決することも、生きて来た功罪に見合った結果に落ち着くのも、人生。それを信じて努力を惜しまず生きて行きたいものです。