劇場公開日 1967年10月25日

「夜の大捜査線 を何十年ぶりに見直した」夜の大捜査線 たけちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0夜の大捜査線 を何十年ぶりに見直した

2025年3月7日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

知的

 本作につき、黒人への偏見が根強い60年代当時の南部を舞台に、北部の都会から来た黒人の殺人課刑事と、田舎の白人警察署長(殺人事件を扱ったことがない)の対立の物語…、と解説しているのが多く見られるように思います。何十年も前に本作を見た時は、私もそのように見たし、そういう記憶として残っています。
 しかし、今回改めて見てみると、白人警官役のロッド・スタイガーは、最初から公平な態度で黒人警官に接しているのが見て取れるし、また、署内の無能で、偏見にも無邪気な複数の署員を束ねるなどして、それなりに有能です。一癖二癖ありそうな市長の無茶振りもこなすほどに世渡りを知ってもいます。街の顔役を黒人警官が殴り返した場面に立ち会いながら、顔役側に味方することなく、公平な態度を通しています。加えて、黒人警官に「お前も感情的になるのだな…」(うる覚え…)とつぶやくシーンは、白人警官が冷静な観察者であることを示していて、彼が偏見のある無能者でないことは明らかです。大体、物語の最初から黒人警官の専門能力を評価して頼りにしているし、危険や周囲の偏見から黒人警官を守ってやっています。一見、黒人警官に強く対立しているように見えるのも、周囲の強い偏見がいかんともし難いことから、黒人警官の身上を気遣ったためとも考えられます。むしろ、この白人警官にとって、この街で生きてゆくことは楽なことではなさそうにも見えます。
 要するに、白人警官は、周囲の偏見はともかく、黒人警官と対立しているようには見えませんでした。本作を対立から和解の物語などと説いている映画解説は間違いでしかありません。
 あと、シドニー▪️ポワチエと並んで立つシーンは、背の高いポワチエのスーツ姿のカッコ良さが際立つ一方、背が低く着こなしがイマイチで足回りも無様なスタイガーのカッコ悪さ(の演出)が、なんとも味わい深いです。
 クインシー・ジョーンズ作曲、レイ・チャールズ歌も懐かしいです。細かいことには目くじら立てず、大満足の傑作です。

たけちゃん
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