劇場公開日 1967年10月25日

「この作品も「ジーザス・クライスト・スーパースター」と並ぶノーマン・ジュイソン監督の名作の一つでは…」夜の大捜査線 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5この作品も「ジーザス・クライスト・スーパースター」と並ぶノーマン・ジュイソン監督の名作の一つでは…

2025年3月7日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ノーマン・ジュイソン監督の
「ジーザス・クライスト・スーパースター」
は私の生涯ベストテンの中の一作なので、
彼は特別な存在だが、この作品がTVで放映
されたことを機に何度目かの再鑑賞。

キネマ旬報では、
「アルジェの戦い」が第1位、
アントニオーニの「欲望」が第2位、
ジンネマンの「わが命つきるとも」が第4位
の年の第8位に選出された
アカデミー作品賞受賞作。
主役二人の対立軸で作品テーマを
見事に映し出した作品は多々あるが、
この作品もその内の一つと思う。

舞台となる暑くけだるさの残る
ミシシッピ州の田舎町にやって来た
シドニー・ポワチエ演じる
大都市のエリート警官の戸惑いには、
“白人対黒人”の問題は当然のことながら、
・平等対差別
・富裕対貧困
・正見対偏見
などに加え、
最新の捜査と旧式の捜査方法という点では
“中央対地方”の問題なども醸し出された。

そんな中、特にロッドスタイガーは、
廃退的な地方都市で警察署長を勤め、
白人至上主義の世界に
ドップリと浸かりながらも、
黒人刑事との出逢いから、
時には元のしがらみに戻りつつも、
終いには、人間は肌の色では無く、
その人物の能力で判断すべきと
思考出来る人間に昇華する名演技は、
アカデミー男優賞受賞が証明するまでもなく
見事な演技ではないだろうか。

この点については、ネットの情報により、
この警察署長役は原作では巡回警察官並みの
準主役級だったとのことを初めて知り、
同じくアカデミー脚色賞を受賞した脚本家
の筆力が、この作品を名作たらしむべく
多大な貢献をしていたように思われた。

ただ一点、短時間しか滞在していない
エリート警官が、
巡回警察官と露出女性との関係や、
巡回再現の時に彼が別のコースを運転して
いるとどのようにして分かったのかが
説明されていないように思ったのだが、
この点について、原作ではどう
著されているのかが気になった。

しかし、演出・脚本の高度な技術と
二人の俳優の名演技によって
名作の域に達した作品と言えるのでは
ないだろうか。

※2025/3/17 追記
映画で分からなかったことがあったので、
原作本を読んでみた。
巡回警察官が道を変えたのを
どうして分かったのかは、
通る道によって車の汚れが異なるという
一応理屈として書かれてはいるが、
映画の中での
犯人と妊娠女性の父親との銃撃戦は無く、
犯人特定のこともエリート警官の推理として
書かれてはいることも含め、
元々サスペンスとしての要素の弱い小説
のように感じた。
驚いたのは、映画全編にまたがる
原作からの大改変。
映画の舞台も
エリート警官の勤務地の設定も、
殺されるのが工場誘致の事業家ではなく
音楽の指揮者であることや、
市の有力者が人種差別主義者ではなく
逆に黒人への理解者であること等々、
設定の違いには驚くばかり。
そして、映画以上に
市全体に漂う黒人差別社会の描写の中、
エリート警官への理解を急速に進めるのが
巡回警察官で、映画よりも
小説での彼の位置付けは大きかった。
しかし、そんな中でも、映画のラストで
警察署長がエリート警官の鞄を持って見送る
理解を深めたエンディングシーンだけは
原作をしっかりと踏襲したものだった。

KENZO一級建築士事務所
Mr.C.B.2さんのコメント
2025年3月27日

原作を読んでみると脚本家(脚色)の腕が
解りますよね。なるほど、こう変えたか、とか、何でここを切ったかなとか。

Mr.C.B.2
こころさんのコメント
2025年3月20日

KENZO一級建築士事務所さん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
色々な原作を読んでいらっしゃるんですね。映画キャストとイメージを重ねて読み進める楽しさもありそうですね。
キャストがそれぞれ個性豊かに描かれていたからか、登場人物も分かり易く、作り手の巧さを感じました。

こころ
こころさんのコメント
2025年3月20日

KENZO一級建築士事務所さん
原作本をお読みになられたんですね 📙
終盤の銃撃戦のシーン、原作にはなかったそうですが、唐突な展開に、個人的には銃撃戦シーンが無い方がいいのでは?と感じました。
警察署長ビルを演じたロッド・スタイガー、名演でした。

こころ
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