「嘘から出たまこと(真実)」ウェディング・バンケット よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
嘘から出たまこと(真実)
四年前に同じ劇場で観ている。そのことを忘れているが、映画の中身は忘れていない。アン・リーの作品にはそれだけの力がある。
台湾出身のゲイの青年が、そのことを両親に知られたくはないということで、中国出身の女性との偽装結婚をでっち上げる。
嘘で塗りかためられた息子の生活だが、息子の結婚を祝福する思いが溢れる両親。異国の習慣に戸惑い、落胆しながらも、息子を案じ、かつその成長した姿を頼もしく感じている姿は、洋の東西を問わず、時代を超えた老親の心境であろう。
ほんの束の間の偽りのはずが、いろいろな想定外の出来事の積み重さなりによって、人生や家族の本当の姿を浮き彫りにしていく。
本当の自分を知って貰いたい気持ちに気付く息子。息子の本当の姿に気付く父親。この二人がそのことを互いに告げ合うことはない。
何も言わず、よく理解し、深く受け止めてくれる父親に目頭が熱くなる。空港で別れる親子の姿に、自分の父のことを重ねない観客はいまい。
中国語圏にはあるのだろうか。「嘘から出たまこと」という言葉が。
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