欲望の翼のレビュー・感想・評価
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脚のない鳥
BBCが2016年に企画した「21世紀の偉大な映画ベスト100」の2位に花様年華が入っていた。(1位がマルホランドドライブ、3位がゼアウィルビーブラッド)。名画100選のようなモノはよくあるし、たいてい定石に鼻白むだけだが、この選は、2000年以降の縛りに加えて、世界じゅうの映画批評家が選んでいることから、他にはない固有性があって、興味深いものだった。
個人てきには、ウォンカーウェイを、すごく好きなわけじゃない。
おそらく若いころは、もっと寄せていたと思うが、大人になり、歳をとると、様式ある表現方法に、まどろっこしさを感じるようになる。
わたしは、若いころは、フェリーニもタルコフスキーもアントニオーニもヴィスコンティもゴダールも、そのほか多数の巨匠を、興味をもって楽しく見たが、歳を食ったらもうアベンジャーズのほうが楽しい──わけである。
ただ欲望の翼は、若いころに見て、明解に覚えている。覚えている理由は、エピローグ直前の列車内の会話。レスリーチャンとアンディラウが話している。チャンが脚のない鳥の話をしようとすると、ラウがそれをさえぎって「知ってるさ、女には受ける話だろうよ、おまえが脚のない鳥のつもりか?おまえなんかただのゴミさ、なにが鳥だよ、鳥ならどっかへ飛んでけよ、さあいけよ早く」と言うのである。
要するに、映画内で、抒情というかポエムに落とそうとして、それを映画内で否定するわけ。
この局で、脚のない鳥のエピソードがさえぎられずに話されていたら、欲望の翼は凡庸に終わっていた、と思う。
映画のなかで、主人公が、印象的なことをモノローグ風に語ることがあります。数多の日本映画もそれが好きです。
そんなときのセリフは「脚のない鳥」のように象徴的で、現実的ではなくて、実用的でもなくて、ただ単に映画内のカッコいいセリフとして、ポエムのような位置づけになっているものです。
そんな主人公のセリフを「なに言ってんだ、アホかおまえ」と全否定している映画を、探してみてください。
わたしはこれ以外に見つけてません。
雨音とレスリー・チャン
何度目かな。10年ぶりくらいに鑑賞。
ただただなつかしい。
若かりしトップ俳優たちの表情と体温、
色彩とムードに押し切られ
雨の匂いに包まれる。
この映画は未完らしく
とても妙な部屋にいるトニーレオンのシーンで終わるのだけれど
この唐突さが物語全体を軽やかにもしている。
そして
レスリー・チャンのしなやかで儚すぎる佇まいに涙。
マンダリンオリエンタルの窓から飛び立ってしまったことが
いまだ残念でならない。
みどり!
なにかのこだわりなのか、全編みどり色だ。ライトも小物も、フェンスも。かえって気を取られてしまい、のめり込めなかった。
作品全体に漂う雰囲気はとても良いが、深いストーリーがあるようには思えない。アーティスティックに作ろうと意識しすぎていやしないだろうか。
ウォンカーワイグリーンの世界
赤や、青のイメージの映画もあるが、この映画はウォンカーワイグリーンの世界。
心の中のウエットな部分が、じとっとした、森林の緑と溶け込んでゆく。
時計を拭く、床も拭く、香港での生活は現実的だ。
鳥に脚は無いが、欲望の翼は付いている。
地に足を付けた生活ができない脚のない鳥にも欲望の翼だけは付いていた。
この鳥が主人公を象徴している。
人は本当は地に足を付けた暮らしをして、望まれる場所で生きた方が幸せだ。望んでくれる女は育ての母を含めれば3人もいるのだから。
しかし欲望の翼は、望まれてもいない産みの母を探しに飛び立ってしまう。
まるで飛び立つ先は楽園であるかのような欲望を抱き嫌気のさした香港を捨てて。
美しい産みの母のなんと残酷なことか。
愛してあげてそこで着地させてあげて欲しかった。そこに楽園はなく、翼を翻すしかない悲しさ。
自分も産みの母に顔を見せてやらないと負け惜しみのひとつも言って後は、自暴自棄になるしか道はなく金もパスポートも失い…
列車が次の駅に到着するまで時間は12時間もたっぷりあったのだ。
報復に合って撃たれるのに1分もかからなかった。
一生に1度しか着地出来ない脚の無い鳥は生きていればやりたかったことに思いを馳せてスーとの1分の時間を思い出しながら着地し命を終える。
最期を見届けてくれた船乗りに感謝。
警官をしていたことも船乗りになった事も不思議な縁だ。
行動力のあるミミがせっかくやってきたのに、列車は走り去る。
他の鳥たちは脚が付いているので、やり直せるさ。着地してまた飛べばいい。
個人的には勝気でチャーミングなミミにも清楚な待つ女スーにも、幸せになってもらいたい。
望まれる場所は2人ともそれぞれある。
愛してくれる男の元で望まれて生きて欲しい。
最後のくわえタバコのトニーレオンの身支度は、客船の中だろうか。
船は香港に到着したようだ。
船乗りも一旦船を降りてサッカーを観にいってスーと再会してほしい。
ミミもいつか車を売って空に飛ばせてくれた男を思い出して香港に戻って来て欲しい。
2020年になって、久しぶりに観た。悲しい鳥に思いを馳せて。
もう、レスリーチャンもこの世にはいない。
香港もこの頃と随分変わってしまっただろう。
この映画を初めて観た頃に比べると、自分の残りの人生もだいぶ少なくなってきた。
1分が2分になり2分が1時間になるような最初の1分の時を大切にしようと思う。
存在の、耐えなければならない悲しさ
レスリー・チャンは不思議な魅力がある人なんだと思った(今さらですみません。私、本当に知らなかったんです)。いろんな顔と表情と体の動きをしてそれが全てその人でしかないような人。一人でしなやかにダンスしている場面は私を「ブエノスアイレス」に連れて行ってくれた。
最後、トニーが居る空間には「天使の涙」の空気が漂っていた。デスク周りは新聞社みたいで、トニーが鏡を見て髪を櫛で撫でつけるシーン(とても色気があって素敵…)は白シャツにタイであることも相まって「花様年華」の雰囲気だった。
水が好きだから、雷の音や大雨がとても良くていつまでも雨音を聞いていたかった。雨の中のアンディをずっと見ていたかった。最初と最後のフィリピンの密林の映像は湿度たっぷりのカーウァイ・グリーン。その中に埋もれて夢で会いましょう。
ミミが着ているワンピース、全部かわいかった。美しいデコルテ、腰のくびれ、きれいに湾曲した背中の線、すんなりした脚の形、ちょうどよい肉感。そしてマギー・チャンはその佇まいのままでチャーミング。60年代の女の子達の雰囲気、いいな。
アンディは耳の形ですぐわかった。アンディもレスリー・チャンも骨格がしっかりしていて、肩幅があって背中が美しく湾曲していて「洋服」がとても似合う体型なんだと思った。でも決してごつくなくてしなやか。
この映画の雨の匂いと湿度にやられてしまいました。今日も猛暑の日だったからかな?
もー、またラスト意味不明やーん。
ラストのワンシーンだけお出かけ前のおめかしをしてるトニーレオンは一体なんの意味があんの???何役⁉︎
わっからんわー。
気になりすぎてネタバレサイトを漁ったところ、続編の構想があったための引きシーンだとか。
ずっといつになったらあたしのかわいいトニーレオンは出るんかいなー?おもてたらいつまでたっても出やへんし、ついにでたって思ったらなんのこっちゃねんやで?もー。
タイトルの「また」は花様年華の感想にかかっています。
と。言いつつだいたいは楽しくみました。
若いマギーチャン、レスリーチャンはかわいいし、映像がおしゃれやし。鏡越しの映像とか音楽の使い方とかにウォンカーウァイみを感じました。
そんなに生母が誰かにこだわる意味は分からんし、ヨディの良さは全然わからんけども。
ぜったい警官の彼のがいいのにって思うけど。
皆片思いなんやなーて思いました。
ミミ役の人はトニーレオンの妻だってことを見終わってから知りました。
そしてレスリーチャンが、故人であることも…
デジタルリマスター版を映画館で鑑賞。
とても良かった
初見時からは四半世紀ほど経ったが、今回もやはり6人(お母ちゃん入れたら7人か)の俳優の表情、動作、佇まいを眺めることに全集中力の95%を費やすこととなった。スクリーンで見るならば何度目であろうと新鮮に感じられる、眼福としか言いようの無い贅沢過ぎる90分。惚れた弱みで張國榮に逆らえず、雑巾で床を拭き拭きする劉嘉玲にまたスクリーンでお会いできて嬉しい。
雰囲気で押し切る佳作
緑がかったというか、青みがかった映像がなんとも印象に残ります。終始薄暗いため映像美という感じではないと思いましたが、雰囲気がめちゃめちゃあります。なぜ、あれほどの湿度が伝わってくるのか。雨の音も妙に魅力的。カメラのカットもすべからく美しいです。BGMも完璧。映像・音楽・カメラワークと非の打ち所がない印象です。さすがはウォン・カーウァイ。
これだけ映画的にムードを作り出せてしまうと、ストーリーがイマイチでも持って行ける力があるな、と感じます。
つまり、そこそこ面白かったのですがストーリーは好みではなかったです。なんかキャラ頼みって感じでありながら、キャラを好きになれなかった。
母親に捨てられ、愛を知らず彷徨って生きざるを得ないヨディが、彷徨い死んでいく姿を見守る話で、変化もなく救いもなかったです。ヨディの悲しみに共感したり萌えたりすれば一気に名作として捉えることが可能でしょうが、個人的にはフーンって感じで終わってしまった。正直、悲しみは伝わって来たのですが、だからなんだ、って感じでした。暴力的でウザいヨディにどこかムカついていたのだと思います。異性ではないのでキザな台詞にも特に思うことはないですし。
警官役がカッコいい、売り子のスーが綺麗と感じたため、この2人の切ないやり取りは割と好きでした。
あと、1990年の映画を現在から観た未来人的立場から考えると、本作は香港の中国への返還直前の不安とか焦りみたいな空気が反映されているのかもしれないな、と感じました。アメリカンニューシネマ的救いのなさは、数年後は共産圏になっちまうのか〜という諦念みたいなものが背後に潜んでいるのかもしれません。
「雨音」の演出は秀逸だ。
ウォン・カーウァイの作品を観覧させて頂いたのは、
初めて。映画における音楽の使い方が斬新。
この映画「1分間という時間の長さ」と「雨」が印象的でした。私にとっては、特に「雨音」という演出が素晴らしい。亡きレスリーチャンの演技は新鮮だ。惜しい役者を亡くしたと思う。ヨディの素性があまり描かれていないのが、少し惜しい気もした。
ラストにトニーレオンが出演されているが、何の役であったか失念。今度『非情城市』も観てみたい。
欲望の翼に惹かれるよ
恋する惑星や天使の涙に比べると、
欲望の翼に関しては、
正直ピンときていなかった。
今回観たら、良かったです。
自分がやっと大人になったからかもしれない?
(すでに中年を過ぎてるのが少し悲しいが)
レスリーの役が最低男だけど
惹かれるわ〜〜
若い頃にはそんな事認めたくなかった
最後にはロクな死に方をしないって分かっているのに
そんな風にしか生きれないひねくれ者?
アンディ・ラウルも格好良いし、
女優陣も可愛いと素直に思えました。
そして最後にトニーが出て来ても、
違和感無かったです。
ため息しかでない
学生時代にリアルタイムで観た時もボーっとしたが、今回もボーっとさして、でも今や背伸びではなくなってもうちょっといろいろ見えてくる年になって、、でも王家衛のここが出発点なのは明らかで、今後もっと洗練されたりコマーシャル化されたりする前の作品で、、でもそんなことより、やっぱりため息でるほどいいな、マギーチャン、レスリーチャン、世界でいちばんかっこよかったよ、と。
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