劇場公開日 1952年5月22日

「【”虚栄心”に乗っ取られた女性の哀しき行く末を描く。主演のヴィヴィアン・リーが演じたブランチと彼女自身が、重なって見えてしまった作品である。】」欲望という名の電車 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”虚栄心”に乗っ取られた女性の哀しき行く末を描く。主演のヴィヴィアン・リーが演じたブランチと彼女自身が、重なって見えてしまった作品である。】

2022年1月13日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

ー ヴィヴィアン・リー主演の、「風と共に去りぬ」を劇場で観たのは、得体の知れぬコロナ禍が、一気に広まり、総ての映画館が休業したあと、徐々に過去の名作を上映し始めた時に鑑賞した。
  ヴィヴィアン・リーの逞しき、困難を乗り越える姿が圧倒的な名作であった。
  調べると、あの稀有な女優さんは当時、20代半ばと言う若さであった。
  で、今作。
  ヴィヴィアン・リー演じるブランチは、過去の虚栄心に捕らわれたまま、妹ステラの所に身一つでやって来る。
  だが、ステラと夫スタンリー(マーロン・ブランド)が住む家は、小さなアパート。
  それでも、ブランチは過去の栄華が忘れられずに、無垢なる虚栄心を振りまき、スタンリーを苛つかせる・・。-

◆感想

 ・マーロン・ブランドが見せる熱演は圧巻である。
 更に、ヴィヴィアン・リー演じるブランチの不安定な精神が崩壊していく様の悲痛さと狂気は見る側を哀しき思いで、引き込まずにいられない。

 ・家族も家屋敷も失った未亡人・ブランチは、家を出た妹・ステラの元へ身を寄せる。だがステラの夫・スタンリーは彼女に反感を抱き、ブランチもまた彼を嫌うようになる。
 やがてブランチは、スタンリーに暗い過去を暴露され、精神的に追い込まれていく…。

 ・ヴィヴィアン・リーが、今作に出演した年齢は30代後半である。年代的な意味合いもあるのであろうが、美しさに衰えは余りない。
 だが、劇中では彼女の容色の衰えを厳しく指摘するスタンリーの言葉が、荒々しく描かれる。

<何とも、遣る瀬無い映画ではあるが、見応えは十分である。
 人間の”虚栄心”とは何であるか。
 それに翻弄されたブランチの姿が、哀しい。
 それにしても、当時の人間の寿命を含め、女優が花咲く時期の短さにも、嘆息してしまう映画でもある。>

NOBU