「観ているこちらも浮かんで沈んで」U・ボート 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
観ているこちらも浮かんで沈んで
静まりかえった水中のU・ボート。
探知機の音が徐々に近づいてくる。
こちらまで息を止めてしまうほどの緊迫した船内。
どこへも逃げ場はない。
敵からの容赦ない攻撃をただただ耐え抜くしかない。
ディレクターズカット版。
第二次世界大戦中活躍したナチスドイツの潜水艦U・ボートの物語。
潜水艦モノというジャンルがこんなに面白いモノだとは知りませんでしたし、まだU・ボートしか観ていませんが、潜水艦モノの中でも傑作なんじゃないでしょうか。
戦争映画だとナチスは悪として描かれます。
勿論ナチスは悪です。
でも、ナチスとして戦ったドイツ人もやはり人間。
彼らも命がけで戦っていたということを痛感させられました。
戦争は戦っている側はどちらも悪いし、どちらも辛い大変な思いをしている。
魚雷を撃ち込んだイギリスの船から助けを求めて逃げ出す乗組員を見放すシーンのように、こちら側(U・ボート)の戦争中だからこその残虐さも見ることができました。
U・ボートの船内はとても窮屈で劣悪だということがしっかりと伝わってきます。
まさに男だけの世界。
まるで汗の匂いや海の潮の匂い、血の匂いがしてくるようです。
観ているこちら側の感情もU・ボートと同じように浮き沈みします。
敵の攻撃がいつ来るかもわからないながらも、ひと時の平和が訪れると仲間と一緒にどんちゃん騒ぎ。
助かったと思ったら、いきなり敵が攻めてくる。
そしてなんと言ってもラストが忘れられません。
全体的に静寂が多く、時間も3時間超え。
色々と考えさせられるし、役者さんたちの本気の表情がより臨場感を増幅させていて、自分の身になって考えて観られる素晴らしい戦争映画だと思いました。
ヨハン役のアーウィン・レダーという方がアングストの人に似ていると思ったら、同一人物でした。