「謎解き苦手な人は口半開きで見てるしかない映画。※ネタバレは纏めて最下部」ユージュアル・サスペクツ alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
謎解き苦手な人は口半開きで見てるしかない映画。※ネタバレは纏めて最下部
見終わった途端「やってくれたね!!!!!」と叫びたくなる作品でした。やってくれたね!!!!
評判が良いとずーっと聞いてはいたものの、何故か今の今まで見ずにいましたが、いやはや。見て良かった。ていうかもっと早く見れば良かった。GEOで旧作50円キャンペーンやってたんで借りてきたんですが、買っても良いレベル(まあ、ラストを知った後は何度も見るもんでもないのかもしれないが)。
言うて大昔(1995年)の作品なので、今見てもそこまで驚きはないのかもしんないなーとか思ってたんですが、全然でした。
大抵、絶賛された作品って割とオマージュにオマージュを重ねて後世まで引き継がれちゃって、今見ると「当時は凄かったんだろうけどさーもう今は使い古されてるよねー」と期待外れになってしまうこともあるので、こんな昔の作品が今も色褪せずに見られるってのはなかなか凄い。
自分は特にミステリーファンではないですが、家族がミステリーファンなので定期的にこういうのを借りてきて見ています。なので推理力はないけど、本数は結構見てる…はず。
上に書いた通り自分は口半開きで見てる勢ですが、そういう人でも何かスゲー!ってのはわかるはず(頭悪い感想)。
すかさず美男美女のエロを差し挟んだり過剰なグロで一部のファンを釣ったりといった、嫌な言い方すると客に媚びるような演出に頼りきりな作品ではなく、かなりの正統派。評判通り、満足度の高い作品でした。
エロなし、虫なし、焼死体あり。
あらすじ:
カリフォルニアの港でマフィアの麻薬密輸船が爆発し、その船上からは焼死体や銃殺体の大量の死体が発見される。マフィアの抗争と思われる凄惨な現場だったが、その中で唯一無傷で生き残ったヴァーバル・キントを捜査官のクイヤンが尋問する。キントは6週間前に遡り、事件のあらましを思い返しつつ話し始める。ニューヨークの警察署に銃器強奪事件の容疑者として、元汚職警官のキートン、強盗のマクマナスとフェンスター、爆薬に詳しいホックニー、そして詐欺師のキントの5人が集められたが、証拠不十分で釈放される。しかし互いの腕を認め合っていた5人はそこで新たな仕事を一緒にすることになり、宝石強盗を成功させる。途中、取引の仲介をするレッドフッドから新たな仕事を持ちかけられるが、それは嘘だった。レッドフッドに詰め寄ると、依頼主であるコバヤシという弁護士に直接会えと言われる。コバヤシは「5人は全員、自分の雇い主である伝説のギャング、カイザー・ソゼの物を、それと知らずに盗んだことがある。5人が集められたのもソゼの力であり、借りを返せ」と言う。ソゼの名を聞いたフェンスターは逃げだすが、翌日死体となって発見される。キートンはコバヤシこそがソゼだ、コバヤシを殺そうと3人に持ち掛けるが、身内を人質に取られ結局コバヤシの求め通り船を襲うことに。仕事は商売敵の麻薬取引を邪魔すること。麻薬を処分し商売敵を困らせることができれば、あとの物は好きにして良いとのことだったが、4人は麻薬も強奪しようと目論む。しかし、船内に麻薬など1つもなかった。
ちなみにタイトルの『ユージュアル・サスペクツ』は、何か犯罪があった時に必ず容疑者として名前を挙げられる人達のことで、要は何度もやらかしてる常連犯罪者のことだそう。
何を書いてもネタバレになりそうな気もするけど、とりあえず製作陣のコバヤシ推しが凄い。もはや何の意味もなくコバヤシという語感が好きで連呼してるんじゃないかと疑うレベル。おかげでコバヤシだけは覚えてますが、登場人物が3人を超えると名前を覚えられないアッパラパーの自分には少々厳しい人数。ミステリーってほんと登場人物多いよな…もちろんわかりにくくするために必要なんだろうけど。
序盤でそれぞれの名前を覚えてないと、結構厳しいです。とはいえ、理解できなくて口半開きで見てても面白いから、我こそは他人の名前覚えるの苦手!勢はもう、わからないままボーっと見ててもいいと思います。
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以下
完全
ネタバレ
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ヴァーバル・キントという名前について、ヴァーバルは「言葉だけの」という意味。序盤でキントは全く喋らないのに、キント本人は「本当にお喋り(ヴァーバル)でね」と言っています(全然喋んねーじゃんと突っ込まれますが)。
よく「ノンヴァーバルコミュニケーション」なんて使われますが、あれが「言葉によらないコミニュケーション」という意味なので、その逆ですね。
そしてカイザー・ソゼ。ソゼはトルコ語で「お喋り」という意味だそう。カイザーがドイツ語で「帝王」なので、カイザー・ソゼは「お喋り帝王」です。何か可愛いな。
というわけで、実は最初からキントがソゼであることはわかるようにはなっています。におわせるどころか、自らヒント出してくタイプ。
が、最初からそれを意識して見ている人がどれだけいるかということですね。むしろ、ここまで伏線を張って、最初からキントが犯人だとわかるように作っているのに、それでもラストを見て「とんでもねえどんでん返しだ~!」と思ってしまう作りに感服。2回目からは、キントが最初っからこんだけ怪しかったのに何で気付かなかったんだろう…?という不思議に浸りつつ見られるかも。
気付かないというより、「何か変なんだけど、何が変なのか理由を探しても見つからない」が正しいかもしれません。確かに最初から最後まで、キントは「何か変」なんですけどね。
キントは結局、部屋にあった物に書かれた名前を適当に並べ立てて作り話をしてただけという、とんでもねえ妄想野郎だったというオチ。想像力が豊か過ぎてついてけねえや。でもこれだからキントは「詐欺師」なんでしょうね。他は皆強盗だの爆弾魔だの、人殺しもしている模様。なのにキントは何かショボい「詐欺師」。しかも気弱そうだし、左半身の麻痺という「即見てわかる障害」を持っている。なーんか変だぞ。
序盤でそこまで思っていても、いつまでもキントは大した動きを見せない。う~ん、違うのか?と思わせて、やっぱりお前かーい!という、芸人が大喜びしそうな王道のノリツッコミを気持ち良くさせてくれそうな、素晴らしいオチでした。
全部キントの妄想で作り話だから、キントが決定的に怪しい動きをしているシーンなんて見つかるはずがない、という完全犯罪すぎる脚本にまんまとハメられました。
絵面はオッサンばっかで地味だし、美男美女でごまかそうとせず、恋愛だの友情だのといったドラマチックな展開も全くないにも関わらず、最初から最後まで苦痛を感じることなく集中して見られました。ぜひ一度は見てほしい。