劇場公開日 1999年2月11日

「微妙。 夢を手放して恋を取る女の性(さが)を「ラブストーリー」と称んだ最後の時代」ユー・ガット・メール きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0微妙。 夢を手放して恋を取る女の性(さが)を「ラブストーリー」と称んだ最後の時代

2021年4月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

❰この女性はなぜここまで弱いのか❱

メグ・ライアン嬢
・・児童書書店の店主。
物語の世界に夢中になる彼女だから、“こんな残念な結末”さえも夢見心地♡で受け入れてしまったのかもなぁ。

1度目は何も考えずに楽しく鑑賞できたんですが、2回目観て なんだか悶々として“違和感”がふくらんでしまった僕です。

その違和感とは ―
いつかおうじさまが~♪と待っていたんだろう彼女メグ・ライアンにとっては、
・お母さんの店がつぶされたこと
・自分の夢がつぶされたこと
・かけがえのない宝物が奪われたこと
それらへの執着や宿敵への呪詛よりも
あっけなく言葉巧みな=メール上手な=王子さまの玉の輿に乗りかえちゃうエンディングへの違和感。
そして、終盤、男の腕の中にしだれ込んじゃう、そんな彼女への、違和感。

実はF-O-Xと通じていたなんて
残された失業者=三人の従業員への説明責任とかはどうなるのだろう

だから
夢はんぶん、そして
弱い「女の一生」の哀しみ半分の、なんだか砂を噛むような鑑賞後感だったのです。

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❰赤ずきんちゃん気をつけて❱

僕は同性としてもトム・ハンクスへの警戒心が解けませんね。
祖父も、父親も、そして本人も、女をとっかえひっかえの男たち。
彼らは“絨毯爆撃”で街中のライバル書店の息の根を止める地上げ屋の一族だ。

付け合わせのキャビアを総ざらえする姿をみて、「ああ、トムの素性はこれだよー」と思った。

・・戦略家の男は、自身の生き方のスタンスは変えない。男は奸計を練り、言葉たくみに女を狩り、アホな女はそこになびいてしまった。この残念感ね。

たぶん22年前の公開当初なら、僕もきっとすなおに楽しめたと思うんですが、もう時代は違うんです。
せっかくのラブストーリーを僕は偏ってレビューしているかもしれない。でも22年前と同じにこの映画を観ることはもう出来ないのです。

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❰フラッシュバック❱

僕にはお気に入りのコンビニがあったのです。
働き者で笑顔の素敵なフランチャイズのオーナー夫妻。二人に会いにいくことが楽しみなお店でした。
しかしすぐ両脇に最大手のライバル店が開店し、ライバル会社の目論見どおり「挟み撃ち作戦」でやられて、そのコンビニは潰れた。

F-O-X はずる賢いキツネ。
あの衝撃がフラッシュバックしましたね。
本当に本当に悲しかった。
怒りがわいた。
「閉店予告」の貼り紙を見て
「僕が仇を打ちます、連中の店にバキュームカーで突っ込んで店内に撒き散らしてやりますよ」と言ったらオーナーは淋しそうに笑っていました。

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❰今この映画を観る意味❱

きれいごとだけではいかない世の中の 毒とか、迷いとか、悲しみもピリッと含んでいるから
この映画が愛されるのはその隠し味のゆえなのかもしれないけれど。

本屋が一件閉店して、店主が もう悲しんでいないことが悲しい。

でもとても良くできた面白い映画ではありましたよ。

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❰幻想❱

例えばですが、
この映画、もしもエンドタイトルの字幕で、
《実業家のトム・ハンクスとメグ・ライアンはその後アフリカに移住して、現地に小学校と図書館を作り、その小学校の教師として今も暮らしている》
とか、白黒の写真付きで教えてくれるとかならブラボー!

あるいは逆に《二人はやはり相いれずに別れました》
という結末でも僕は同じくブラボー!だと思う。

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クレヨンハウスの落合恵子なら、星は付けないだろう。
感想を訊いてみたい。

きりん
talismanさんのコメント
2021年4月17日

コメントありがとうございます。フムス~!美味しそう!「ユー・ガット・メール」はずいぶん前に見て、星付けてレビュー無しのままだったのが、きりんさんレビューを読んで色々思い出してちょろっと書きました。
確かに、藤山直美でやって欲しいです!

talisman
talismanさんのコメント
2021年4月17日

きりんさんの「幻想」がエンドロールだったらbravissimoです。

talisman
talismanさんのコメント
2021年4月17日

クレヨンハウス!きりんさん、目のつけどころ、素晴らしい!

talisman