劇場公開日 2020年2月22日

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「坊や大きくならないで」山の焚火 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0坊や大きくならないで

2020年3月4日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

1985年のスイスの巨匠の作品。
原題は Alpine Fire
3000メートル級の山奥で自給自足で暮らすスイスの家族を描く。

親子4人家族と同じく山で暮らす祖父母の6人だけの登場人物。親子4人は10年前ぐらいの回想シーンではそっくり別の4人が使われていた。

少年は聾唖で、性格は頑固で凝り性で癇癪もち。癇癪もちはかなり偏奇的な性格の父親からの遺伝としばしば表現されていた。コミュニケーションは身振り手振り。姉さんが字を教え、手話を交え、家族のなかでは一番主人公と密接な時間を過ごす。母親は明るい性格ではなく、神経症的。母親と姉は主人公をいつまでたっても「坊や、坊や」と呼ぶ。そのたびに気持ちがゾワゾワしてしまった。優しい弟思いの姉さんが精神的にも母親役の何割かを担っている印象があった。家族のなかでは一番まともで、勉強もできて、町で教師になる夢があったらしい。家族の関係は悪くはない。だけども、少年に町で適切な教育を受けさせる機会を逸した後悔を母親は何度か洩らす。父親は頑固で、「バカにされて、金も取られて、戻されるだけだ」という。男のプライドが邪魔させているのだと思う。閉鎖的状況をより閉鎖的にしている要因だが、誰も強くは責められない。母親は夫に追従するタイプ。
娘は健康的で素朴で美しい。
少年は思春期に入り、姉に興味を示し始める。
やはり、閉鎖社会に暮らす姉弟は根本的に幼く、危うかった。

肝心の山の焚き火のシーンはまずまず予想できたものだったが、やはり衝撃的だった。
焚き火の焰、羽毛布団の白、天空の闇が幻想的だった。体を温めあううちに境を越えてしまったんだと誰もが疑うことのないシーンだった。

両親の亡骸を安置した雪降り積む庭に二人の顔が見えるように少年が家のガラス窓を外して設置するシーンでは、少年の無垢な心が非常に痛々しかった。

白のシーツや炭で黒く染めたシーツを干して、祖父母に忌中を報せるシーンは、その後に延々と続く悲劇を想像させるエンディングで、非常に重かった。

カールⅢ世