夜行列車(1959)

劇場公開日:

解説

夜行列車に乗合せた人々のさまざまな人生模様を描いたドラマ。脚本はイェジー・ルトフスキーと「尼僧ヨアンナ」のイェジー・カワレロウィッチで、カワレロウィッチが監督した。撮影はヤン・ラスコウスキー、音楽はアンジェイ・トシャスコフスキー。出演者は「尼僧ヨアンナ」のルチーナ・ヴィニエツカ、舞台のレオン・ニェムチック、「灰とダイヤモンド」のズビグニエフ・チブルスキーなど。

1959年製作/100分/ポーランド
原題または英題:The Night Train
配給:新外映
劇場公開日:1963年3月1日

ストーリー

ポーランド中心部の駅から発車する夜行列車は、翌朝バルチック海岸の町に到着する汽車だった。ホームは混雑していた。そんな中を黒メガネの男が一等コンパートメント入口に近づいた。イェジー(レオン・ニェムチック)だ。彼は切符がなかったが、強引に乗車してしまった。また一方、眼の美しいマルタ(ルチーナ・ヴィニエツカ)とその恋人スタシェック(ズビグニエフ・チブルスキー)がいた。マルタはスタシェックとの愛を清算するべく旅行に出たのだ。列車が走り出すと女車掌はイェジーに十六号寝台券を与えた。が、その室にはマルタが乗っており、やむなく二人は同室することになった。スタシェックは普通車から「すぐ帰って来い」という手紙を渡したが、彼女は破り捨てていた。列車はある駅に着いた。イェジーはタバコを買いに下車した。その隙にスタシェックが窓下に来ては自分のもとに帰るよう懇願したがマルタは応じなかった。夜中、突然列車が止り警官達が乗りこんで来た。殺人犯が十六号室にいるというのだ。イェジーが連行されたが、すぐ釈放された。彼は実は医者であり、手術中患者を殺してしまい悩んでいたのだ。車内騒然の最中にマルタはカーテンの間からのぞく男を見つけ、その男から十六号室の券を買ったことを思い出し警官にしらせた。男は列車から飛び降りて逃げたが、墓地で乗客達に捕まってしまった。汽車は乗客を乗せ再び走り始めた。やがて夜が明け、次の駅に着いた。相変らずスタシェックは、マルタの窓をたたいた。と、イェジーが窓を開けたため、スタシェックは驚き列車の走るのを忘れてホームに残った。汽車は終点に着いた。イェジーはマルタに深い感慨を抱きながら妻の待つホームに降りていった。マルタもトランクを持つと静かに降り、遠くに白波のみえる砂浜を一人歩き続けていった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0夜行列車での人間模様を描いた傑作

2023年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

初見は、学生時代、ACTミニシアターで鑑賞。
物語の大枠はおぼえていても、不思議な雰囲気を堪能できるポーランド映画傑作のひとつ。

ポーランドのある都市からバルト海沿岸保養地に向かう夜行列車に乗り合わせた乗客たちの人生模様が交錯するイエジー・カヴァレロヴィッチ監督作品。

都会から発車する夜行列車に、黒サングラスの男(レオン・ニェムチク)が発車ギリギリに車掌と交渉の上で乗りこむ。彼の指定席のある個室には、すでに金髪女性(ルツィナ・ヴィンニツカ)がいて、車掌が注意しても居座って退室しない。彼女を追いかけて来た若い男(ズビグニェフ・ツィブルスキ)とのやり取り、黒サングラス男に誘いをかける弁護士の妻、新婚カップル、不眠症の男など、様々な思い・悩みを抱えている中、夜行列車は走り続ける。
深夜、夜行列車が急停車して、警官が多数乗り込んで来て、殺人犯探しを始めて……といった乗客たちへ波紋を投げるような展開になっていくあたり、本作を観る者へ興味を持続させる力強さを持った映画である。

そして何より、疾走する夜行列車を舞台にしていることから、狭い通路を人かきわけながら移動するカメラ、列車の窓から見える風景シーン、時には列車の外側から車窓の内側を映して衝撃を与えるような撮り方など……さまざまな角度から人々とその気持ちまで表現する撮影が素晴らしい。
とりわけ素晴らしいのは、黒サングラス男と金髪女性が相席(2人で1つの部屋)となり、互いの仕草を盗み見するような仕草を捉えたシーンであろう。女が男を読んでいる本の端から見つめたり、男が女を部屋の小さな鏡を通して見たりするあたりが素敵である。

個人的には、『世代』・『灰とダイヤモンド』などで名演を見せてくれたズビグニェフ・ツィブルスキが、本作でも存在感を見せてくれたのが嬉しい。

いろいろと他人の事が気になる乗客たちの姿は人間らしさが出ていてユニーク。
また、偶然相乗りとなったサングラス男と金髪女は最初はギスギスしたものの、女の眼に入ったものを男が取ってあげてから和やかな雰囲気が少し出てきて、互いに事情は話さないものの気になる存在になっていくあたりも心穏やかに見られるのが良い。

イエジー・カヴァレロヴィッチ監督の傑作。

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たいちぃ

4.0夜行列車に乗り合わせた人たちの人生が凝縮された人間絵図

2022年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、TV地上波

「尼僧ヨアンナ」のイェジー・カヴァレロヴィチの代表作。中学時代にテレビで観て感激した映画を漸く劇場で鑑賞する。ある夜行列車に乗り合わせた人たちの人生の苦しみを見詰めた人間絵図。物語の結末がない最後、女主人公がひとり取り残されるラストシーン。ファーストシーンと殺人犯が群衆に取り囲まれるシーンの俯瞰ショットがいい。アンジェイ・ワイダと並ぶポーランド映画のカヴァレロヴィチの地味なこの映画が好き。ストーリーを楽しむ作品ではなく、映像に表現された人間の生きる虚しさを感じる映画。「灰とダイヤモンド」のズビグニエフ・チブルスキーが出演している。その「灰とダイヤモンド」も中学時代に日曜洋画劇場で観たが、こちらの映画程は感動しなかった。

  1981年 6月3日 池袋文芸坐

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Gustav

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