「お馬さんにもアカデミー賞を」モンタナの風に抱かれて TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
お馬さんにもアカデミー賞を
ロバート・レッドフォード監督/主演のヒューマンドラマ。
ファッション誌の敏腕編集長アニーは仕事は優秀な一方、自意識過剰で家庭に不向きな、映画やドラマによくあるタイプの女性。
それでも不幸な事故で身心ともに大きく傷付いた娘をどん底から救うため、周囲に理解されない中、安楽死必至の娘の愛馬を調教し直すことから始めようと彼女なりに頑張る。
それゆえ、家族愛や家庭関係の再生が主題かと思いきや、さにあらず。夫や子供がいながらほかの男に心を奪われたら、再生どころか、家庭崩壊になっちゃう。
レッドフォードの監督作品には政治的メッセージの強いものも多いが、本作は政治色なし。
『普通の人々』(1980)でも気になったが、女性に対する監督の先入観にどこか違和感を感じる。
個人的な印象として、C・イーストウッド監督の『マディソン郡の橋』(1995)に触発されて作っちゃった感じ。
グレイスを演じたのは子役時代のスカーレット・ヨハンソン。大人になってからも深刻な役が多いが、まさかこの頃からトラウマを抱える役を演じていたとは。
さすがの演技力だが、物陰や柵越しに他人を見つめるシーンはほとんどホラー。いっそ彼女が若いうちに、『キャリー』(1976)のリメイクやって欲しかった。
ピルグリム役の馬は演技も凄いが、大人しく顔の傷のメイクをさせていただけでも大したもの。
この頃のオスカーに子役賞や動物賞があったら、ヨハンソンと一緒に受賞出来たかも。
原題の“THE HORSE WHISPERER”を直訳すると『馬に囁く者』。確かにタイトルとしては伝わりにくいが、『モンタナの風に抱かれて』という邦題も、も少し何とかならなかったものか。
NHK-BSにて初視聴。