「大きな影響を多くの作品に与えた名作」モロッコ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
大きな影響を多くの作品に与えた名作
モロッコはスペインのジブラルタル海峡を挟んだ対岸の戦略要地で、古くから戦争が絶えない
1930年頃はフランス領となり外人部隊という傭兵が戦っていた
舞台はカサブランカから海岸沿いに南西に350キロ下ったモガドール、現地の貧しい人々が暮らす街にヨーロッパから食いつめたり訳ありの人間が吹きだまる
その植民地経営でフランス本国から大金持ちもやってくる
外人部隊は所詮吹きだまり、兵隊達の過去は何をしていたか知れたものではない
本作はマレーネデートリッヒの出世作として有名だ
見所は三つ
一つ目は彼女がキャバレーでシルクハット姿で歌うシーンで、超有名
二つ目は、ゲイリークーパー演ずる兵隊が部隊と共に街をでて行くシーン
彼を諦めたはずの彼女が外人部隊の鳴らす鼓笛隊の行進小太鼓の音にいてもたってもいられなくなり、席をたった瞬間、金持ちから貰った真珠のネックレスが切れて散らばるシーン
いくら金の力で縛っても、真の愛によって吹き飛ぶことを表現してみせた監督と彼女の演技が合わさった名シーンだ
そして最後は、ラストシーン
今度こそ最後の別れと街を出て行く部隊にふらふらとついて行ってしまうシーン
砂漠の先を進む外人部隊の男を追う現地の女に混じって裸足で追いかける
行進の小太鼓の音が遠ざかり、砂漠を吹き渡る風の音だけがする
このシーンで本作は伝説になったと思う
監督の演出、単なる女に堕ちた彼女の演技のすばらしさ
これこそ映画だと思う
デートリッヒは自分がいい女だと知っている
あらゆる仕草が男の気を引く事を知っている
それはこの役だけではなくて、本人がそうなのだ
他の女はとても彼女にはとても張り合え無いことをたちどころに悟る
演技を超えた説得力がそこにある
そんな女がラストシーンでは蔑みの目で見ていたはずの外人部隊の男を部隊を追いかけてついて行く女達と同じになってしまうのだ
そしてゲイリークーパー
何もしなくても女の方から寄っていってしまう男そのものを演じきっている
しかも、どうせろくな過去を持たないことも
彼女の人生を思い、やせ我慢をして彼女を捨てる
これもまた素晴らしい説得力がある演技だ
中盤少しダレるが、前半、終盤は正に名作
本作はカサブランカ、情婦マノンなど多くの名作に影響をもたらしたと思う