コイサンマンのレビュー・感想・評価
全2件を表示
このまま忘れ去られてしまうには余りに惜しい大傑作
サン人のニカウさんを主役に据えてのシリーズ第2作です。
原題は「The Gods Must Be Crazy Ⅱ」ですが、
公開時の邦題は「コイサンマン」で、
今回レンタルしたDVDでは「コイサンマン2」となっております。
今回のお話は、
1・木の実の収穫帰りにニカウさんの幼い子供2人が、好奇心から密猟者のトラックに乗り込み、そのまま連れ去られてしまい、それを追いかけるニカウさん。
2・ニューヨークから国際会議に参加するためにやって来た女性弁護士が、地元の動物学者と二人で小型飛行機に乗っていたら嵐に遭遇し遭難。
3・アンゴラ内戦で1人のキューバ兵と1人のアンゴラ兵が鉢合わせし、決死の戦闘が始まる。
という大筋で3つの物語が並行して展開し、やがて1つに集約し、また分かれていくという構成です。それぞれ別の物語が1つに集約してまた分かれていく構成は第1作同様ですね。
私はこの映画、今回運よくレンタルしているのを見つけて初めて鑑賞したのですが、大傑作です。まさかいまさらこんなに映画でワクワクドキドキさせられるとは思いませんでした。
前作に比べ今作では主役のニカウさんの出番はかなり少なくなりました。あとエキストラの人数もだいぶ減っております。(映画のシチュエーション的に大勢のエキストラがいらいない内容だからですが)
しかし今作では前作になかった特撮シーンと前作をも凌ぐ地味に危険なスタントシーンがあります。
二人乗りの小型飛行機が嵐に巻き込まれるシーンにおいて特撮で表現される積乱雲の禍々しくも幻想的な様はとても味がありますし、爆発は無いのですが、爆発なんか目ではない程危険なシーンが披露されます。本当に危ないシーンなのでハラハラというよりヒヤヒヤしながら、画面にクギ付けです。(それでもコメディの姿勢は崩さないので尚のこと凄いのです。)
前半こそは前作同様、ニカウさんに代わって出番が多い二人の子供と動物たちの可愛さにほのぼのとしながら、平日の夜、寝る前に見るのに丁度いいなぁ~くらいの感覚でいました。
ところが物語が山場に向かうにつれて「え?」「どうなっちゃうのコレ…」「え?エッ!?」という展開になり、いつしかほのぼのどころではなくなり、手に汗握りながら事の成り行きを凝視してしまいました。そして最後はやはりホッコリ温かいものを心に宿してくれるのです。
ニカウさんたちにとって地上のものは全て神様からの賜りものであり、全て善なるものである、まさに楽園なのですが、そこで生きる術を持たない文明人たちにはとても楽園とは思えません。
劇中のキューバ兵は言います「カストロ首相にだまされた。アフリカは楽園だって?―」と、彼は故郷キューバへ帰るため彷徨っています。彼にとってアフリカは戦場であり不毛の荒野です。
文明は私たちの暮らしを快適なものにし、飢えや病の脅威から少し遠ざけてくれます。だからこそ私は酷暑の中でも呑気に映画鑑賞なんぞに耽ることが出来るのです。なので文明の恩恵にドップリ浸かっている私には到底文明批判など出来ませんが、映画ではニカウさんたちの楽園の少し離れたところでは文明人たちによる密猟や内戦が行われていることが示されます。残念ながら文明人は何かと利己的で対立しがちなのは確かな事なのです。
そしてそんな対立する文明圏から過酷な楽園に迷い込み出会った登場人物たちは、この期に及んでもまだ対立を続けます。
しかし「生きて帰りたい」という共通の想いを抱いている彼らは、颯爽と通りがかったニカウさんと行動を共にするにつれ、自分たちが属していた文明社会での対立を越え、手を差し伸べあえるようになっていきます。そんなささやかな希望を見せてくれる映画です。
子供たちを捜して広大な大地を駆け抜けるニカウさんはかつての間寛平さんを思い出させますが、それはともかく、89年の作品ですので「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」「魔女の宅急便」と並んで親の顔よりも見た映画となってもいい大傑作だと思います。
この映画がロクに配信もされず人目につき難い現状は非常に嘆かわしいばかりです。見る機会があれば是非ともお勧めの1本です。
全2件を表示