「長かった」未来世紀ブラジル 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
長かった
高校生の時に映画館で見てあまりの美術の素晴らしさと複雑なストーリーに圧倒されて長い間好きな映画第一位だった。その後もオールナイト上映などで何回か見てその度に感動したような記憶がある。
映画秘宝のオールタイムベストを決める時に、DVDで見返したところ、当時官僚の天下り問題などに本気で腹を立てていたため、この映画は官僚の話で、仕事もろくにせず女にうつつを抜かす様子に頭に来て、ベストテンに入れなかった。
今回、イオンシネマのシネパスで改めて見た。美術は素晴らしいのだが、昔見た時より、セット感があった。CGの技術が進んで映画全体の映像クオリティが上がってしまったせいか、セットの美術がしょぼく感じてしまったのかもしれない。
複雑な物語は、何が描きたいのかよく分からなかった。大した内容もないままごちゃごちゃしていて、もっとすっきり描くことはできなかったのだろうか。
主人公がけっこうなおじさんなのに、顔だけが好みの女に夢中になって、我を失うほど恋をする。外見が好みなだけでまともな恋愛でもなんでもない。
ヒロインは主人公の思い込みでテロリスト扱いされるのに、キスしたりセックスまでさせてくれて変な女だった。夢の中でかつらをかぶるとすごくきれいな女だと言うことは分かるのだが、普段のあのおばさんみたいな髪型は好きになれない。死んでしまうのはかわいそうだった。
夢の場面はなんてかっこいい映像なのだと思ったのだが、巨大な武者はちょっと剣で突かれると発火するほど弱い。単なるコケおどしだった。
けっこう長くて眠くなってしまった。つまらないアクションシーンがだらだらと続いて今回はディレクターズカットなのかと思って調べたら、昔見たのと同じ長さだった。
こんなすごい映画がヒットしないなんておかしい!と昔は思ったものだが、今見ると仕方がないかなと思う。
(追記)
午前十時の映画祭で7年ぶりにスクリーンで見る。イオンで見た時はハリボテ感があった美術が今回はそうでもなくしっかりしたものに見えた。主人公が夢で見た女に恋をするのは童貞っぽく、現実の彼女が単に運送業をしているだけなのに先走って過剰に守ろうとして騒動を起こすのもいかにも童貞っぽくて、童貞だった自分がこの映画にドはまりするのはまったく納得がいく。今回は、丁寧にさりげなく伏線が張られていることに気が付いた。
誰に対しても、世界に対しても冷ややかな目線で、前回見たときよりは面白く感じたのだが、今回もそれほど魅了されなかった。