「ハチャメチャなディストピア」未来世紀ブラジル parsifal3745さんの映画レビュー(感想・評価)
ハチャメチャなディストピア
表題のブラジルは、この映画で流れる「ブラジル」という桃源郷のような世界を歌った曲と歌詞から来ているのだろう。皆、理想を求めて生きている未来が、果たしてどうなるかって問いの映画なのだろう。
1986年製作ということで、SFXなどが使えず、コンピューターも本格的に普及していない中での想像、創作は大変だったであろう。
この映画の中では、人間は終始、いい加減で適当、管理を統括する中央省庁による文書による指示や命令で管理されているかのよう。指示や命令は絶対的で、誤りを正すには膨大な時間を要する。そして、男は出世を求め、女は美と若さを求めているように描かれていた。
そんな無機質な世界で満足できる人ばかりであるはずもなく、主人公のサムは、夢に出現する理想の女性と結ばれることに運命を感じる。その夢の人物は、誤認逮捕されたバトルの上階に住んでいたジル。彼女のために、異動を願い出て、居場所を突き止め、抹殺命令が出ていることを知り、助けるために管理システム側の人たちとバトルをするって物語。情報剥奪省のヘッドは、多くの役人に囲まれ、情報に翻弄される様子は、現在を表しているかのよう。省庁は、階ごとに全く異なる様相であったが、この辺りは、この当時の予想の限界か。セットや建物が、グレーを基調とした独特の特徴を持っていて、チープな感じもドタバタにぴったりな感じだった。
後半、ジルを守るための逃走部分は、もうハチャメチャ。因果関係や心理的な経過がわかりづらく、混乱と行き当たりばったりが交錯し、収まったかと思いきや、捕らえられて洗脳装置にかけられてみた幻影だったオチ。耳障りのよい音楽、見た目を良くする整形女性、圧倒的な情報量とシステムなど、本当にそれが未来の理想郷に繋がるものなのかって問いが浮かんできた。自分たちが直面している問題でもある。マトリックスへと繋がるような映画だった。