「戦争で消される貴賤と生まれる善悪」ミニヴァー夫人 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争で消される貴賤と生まれる善悪
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なぜ人は常に格付けしたがるのか。
800年余り?村を統治してきた貴族のBeldon家、裕福な中流階級のMiniver家、労働階級の駅長Ballardやメイド達を通して、発音の違い、彼らの教養レベルや差別意識など、(アメリカ人が想像する)イギリスの階級社会が描写されています。
花の品評会で、代々1位を獲得することになっているBeldon家の薔薇より、労働階級のBallardが育て中流階級者の名を冠した薔薇が優れていると認めることが、貴族にとっても勇気の要ることであり、また腰が抜けてしまうBallardの姿からも、中流階級による橋渡し無くして、階級の垣根を取り払うことが如何に困難かを象徴していました。
本来ならば、貴族の庭園で咲いた花でも、駅で育てられた花でも、違う美しさを持ちながら同じく美しい筈なのですが…。
映画の意図は、社会的階級に関係なく英国民全員の一致団結、そして連合国同士の協力を呼び掛けるものかも知れません。具体的には出て来ませんが、Hitlerの有名な価値観は人間の優劣と差別であり、軍隊の階級も統制力のためとは言え格付けです。戦争はそれまで築いてきた封建制度を無意味にし、旧体制の破壊と共に別の格差や新しい正義をもたらすものだと改めて思いました。
美しい庭園も花も命も儚い…。
神父が参戦を力説し、戦争賛歌のような終わり方ですが、現代に置き換えて観るとすれば、人間の心の中に潜む永遠の敵への宣戦布告と受け止めたいです。
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