「良作だがまだ白人視点」ミッション Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
良作だがまだ白人視点
総合:75点 ( ストーリー:75点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
昔から政治と宗教は結びつき、政治は他民族と植民地支配に宗教を利用し、宗教は勢力拡大のために政治を利用する。フランシスコ・ザビエルもスペイン王に日本の植民地化についての情報を送ったと言われている。
しかし一部の現地で布教活動をしている者にとってはそんなことはどうでも良く、自分の宗教観と信念に基づき行動をする。追い詰められても命を懸けて行動をする神父たちと先住民の行動は、この時代のこの地域に数多くあった悲劇のたった一つに過ぎないが、やはりこうして映像で観ると実感がわいて面白い。
だが気になる部分もある。こうして欧州の支配に立ち上がる人々の主人公はやはり白人なのだ。しかもわずか3人だけの白人だ。実際には立ち上がった大多数は先住民なのに、その先住民たちは名前すら出ないままにやられ役として死んでいく。現地の王も時々出てきた少年も、先住民の中の1人扱いに過ぎず、名前も呼ばれないままに白人たちに付き添っているだけ。先住民の歴史でも白人視点の歴史は映画化されても白人中心視点でろくに人間扱いされていない。本来はこの先住民を人としてしっかりと描く必要もあると思うが、イエズス会に心ある人々がいたという結論で終わってしまっている。先住民は当時の白人たちからはもちろん、映画の中で制作者側からも獣とたいして違わない扱いが最後まで変わらなかった。
この思想は映画界では1990年の『ダンス・ウィズ・ウルブズ』まで変わらない。この作品で初めて先住民の1人1人に名前がつき、それぞれの性格と行動が個々に作品内で表現され、1人の人間扱いを受けられるようになる。