マリア・ブラウンの結婚のレビュー・感想・評価
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不条理感
マリアは、戦中から戦後にかけてのカオスなドイツ、そしてナチスに加担し翻弄された加害者としてのドイツの象徴に見えました。戦争が終わっても、戦争を経験した者とそうでない者とでは、見える景色が全く違います。
女性の経済的自立を描いた作品ではありましたが、その一方で封建的な結婚制度に縛られているとも思いました。夫といってもほぼ一緒に過ごしてないんですよ?特段ハンサムでもなかったしなあ。ただ、一緒に過ごしていないからこそ、相手に対して自分に都合の良い投影ができるし、幻滅もしません。夫という幻のおかげで、マリアは生きられたとも言えます。
マリアの様な強く逞しい生命力のある女性でも、ラストはあっけない。どんなに苦労して生き延びたとしてもガスで終わるこの不条理感。そして戦争もまた、マリアの人生と同じ様に不条理を生み続ける。爆発がマリアの故意にしても事故にしてもどちらにしても儚い。人生最後は必ず「死」にますが、ファスビンダーが描くと美しく潔く煌びやかに感じます。それは、ファスビンダー自身が死に近づきたがっていたからかもしれません。ガスとナチスがまた上手く結びついていました。
西ドイツ版野村○代さん!?
学生時代、観ようかなと思っていた映画。
この度まさかの40数年ぶりの再公開。
早速映画館に駆けつけました。
破壊と混乱の中から、女を武器に成り上がる方の話。ハンナ.シグラの変貌ぶりが良い。日本同様ラジオからは人探し番組が、やがてアデナウアー首相が当初は再軍備を否定するが、舌の乾かぬ内に再軍備を決定(この史実は本作を観るまで知らなかった。)。バックに流れるラジオの音声と、セリフの両方の字幕を読まないといけないので、日本の観客は苦労する。本作に限って吹き替え版がほしい所。セリフのみ吹き替えで、ラジオは字幕で良い。ワールドカップ優勝シーンの中継が流れる中の爆発シーンは勿体ない。この前の新橋の爆発のように本人は助かる事も有るので、今度はテレビの人気者になり、やがて過去を知る人に暴かれというオチも良いと思う。
学生時代に見るには難しかったと思う。
亡母が「女学校の同級生が、戦後まもなく黒人兵と腕を組んで歩いていたのを見た。その後どうなったのだろう。」と話していたのを思い出した。
1944年、第二次世界大戦が激化するドイツ。 爆撃が激しくなる中、...
1944年、第二次世界大戦が激化するドイツ。
爆撃が激しくなる中、結婚式を挙げたマリア(ハンナ・シグラ)。
夫のヘルマン・ブラウン(クラウス・レーヴィッチェ)は、結婚式翌日、戦地に赴き、そのまま帰還しなかった。
夫婦で暮らしたのは、わずか半日と一夜。
終戦後、尋ね人の看板を背負って駅へ日参するマリア。
親友の夫は無傷で帰還するも、ヘルマンは帰らず。
とうとう諦め、バーで女給として働き始めたマリアを見初めたは進駐軍の黒人米将校ビル。
深い仲になったビルとマリアであったが、ある日、愛し合おうとしていたふたりのもとにヘルマンが帰って来、ビルとヘルマンがもみ合う中、マリアはビルを殴殺してしまう。
裁判にかけられ、判決が下されようとしたその時、「殺したのは自分だ」とヘルマンが声をあげ、そのままヘルマンは服役することになってしまう・・・
といった内容で、マリアはその後、列車内で知り合った織物商オズワルト(イヴァン・デニ)の通訳兼秘書として事業の一翼を担うことになり、成功者になるのだが、獄中のヘルマンのもとを訪れることは忘れなかった。
そこには、ヘルマンへの心底から愛があったのだが、ヘルマンとの距離は微妙に離ればなれで、最終的にはバカげた死がふたりを迎える・・・と展開する。
戦後女性のたくましい半生の映画のように見えて、その実、マリアのヘルマンに対する深い愛が描かれた物語。
可憐な女性の清らかな愛、というような通り一遍の描き方でないところが本作の特徴で、さらに、そのふたりのあいだを裂くかのように、復興途中のドイツの喧騒・騒音が映画全編にわたって鳴り響いているあたりが、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の鬼才ぶりを示しています。
特に、「ドイツ連邦共和国初代首相アドナウアーのユダヤ人ホロコーストの贖罪声明」と「サッカーワールドカップ決勝 ドイツ対ハンガリー戦」の両ラジオ実況は、セリフとも丸被りで、今回のリバイバル上映では、セリフとラジオ実況の両方が字幕で表現されています。
ワールドカップの実況から映画のラストは1954年であることがわかり、ドイツの戦後復興史の一面を描いているともいえます。
このように、多重構造を持った映画なので、理解するのはなかなか骨が折れます。
しかしながら、そのあたりが理解できると、より一層、映画の深みが味わえるでしょう。
出演陣は誰もが秀逸ですが、ハンナ・シグラの存在感がすごいです。
傑作です。
タイトルなし
爆発に始まり爆発に終わる。ずっとざわざわ落ち着かない音が流れてるんだけど、それこそがマリアの生き方であり心境(マリアだけでないけど)。それがあんな収束を迎えるなんて。
生きることと愛することがトレードオフになってるのが不穏の元なんだけど、食い詰めるとどの国もどの時代もそうなって、全く他人事ではない。
「住んでいるこの国こそ狂気」。
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