劇場公開日 1952年9月16日

「孤立無援、初老保安官の死闘」真昼の決闘 細谷久行さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0孤立無援、初老保安官の死闘

2014年9月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

興奮

わたしは余り西部劇を観ないし、数多く知らない。
しかしその例外としてこの作品がある。多くの方々が既に周知の作品である。この西部劇は少し変わっている。インディアンも牛も幌馬車も登場しない。だがこれはその範疇を越えた作品であり、いわばヒューマン・ドラマとさえいえるのではないか。そこには人間の弱さとその裏返しの強さがある。また自己中心と勇気が絡み合っているように思う。さらに腕っ節の良いガンマンも強いヒーローも登場しない。ただあるのは長身で飄々とした初老の保安官だけである。

北部から釈放され、ウィル・ケイン(ゲーリー・クーパー)に復讐心を燃やす無頼漢が正午の汽車で5年ぶりに帰ってくる。時は暑い日ざしがじりじりと照りつけるある日曜日、結婚したばかりのウィルとアミイ(グレース・ケリー)にこの報が届く。ウィルはこのままでは町の平和が乱され取り返しのつかないことになると馬車を町にひき帰えす。彼は初々しい新妻アミイの説得に応じず援護隊を募るが身の危機を感じて一人二人と抜けてゆく。ウィルに多大な恩があるのに4人の無頼漢どもにおじけづいて援護を拒む。時計の針は正午へと非情に時を刻んでゆく。ウィルとて人間、恐怖心がよぎる。馬小屋に赴いて逃亡をふと考えるが踏みとどまる。

ついに正午となり彼は人気の全くない町を駅に向って歩き出す。その後ろ姿をカメラがとらえ引いて、引いて通り全体に孤立無援のウィルの孤独な姿を映し出す。寂寥感さえ漂う。

それからのガン・ファイトの詳述は割愛するが、血わき肉踊るスカッとした映像になっている。まさに秀逸である。

身の安全を優先する町民の身勝手さ、孤立無援で敵を倒したウィル・ケインの勇気と行動力にはフィクションながら賛嘆せざるおう得ない。

細谷久行