真夏の夜のジャズのレビュー・感想・評価
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なんて贅沢な一日
ルイ・アームストロング、チャック・ベリーにモンク。ジャズ素人の私でも知っている錚々たるメンバー。チャック・ベリーが、バック・トゥー・ザ・フューチャーでマイケル・J・フォックスが見せた通りの動きをしていて嬉しかった。
ルイ・アームストロングや女性ボーカル達(名前を知らなくてごめんなさい)の歌声は、テレビ越しでも揺さぶられるような歌を聴かせてくれる。音楽が好きとか仕事としてとかではなく、もっと根本的なところで音楽と結びついている人達なんだろう。
真夏の一昼夜を、こんなところで過ごせたらなんて贅沢だろう。当時の街や観衆の様子をみられるところも楽しい。
ジャズ
1958年、Newport Jazz Festival
ルイアームストロングとチャックベリーがとりわけよかった。
マベリアジャクソンはサマーオブソウルとは違っていて、そしてまだ若い。お客さんは8割くらい白人。お金持ちそうな。
こういう舞台に立ってきて、10年後、サマーオブソウルの場はきっと感慨深かっただろう。
赤ちゃんももう今は60代で、この夜の出演者も楽しんでた人たちもあらかたいなくなってしまったんだなと思うとさみしくなった。
ルイアームストロングのロッキングチェアの歌が泣けた。誰も知らないおじいさんの苦しみを、ロッキングチェアだけが知っている。白人たちが知らない苦しみを。
会場の雰囲気や熱気が中心で、演奏している手元などはあまり映らない。もっとバンドメンバーや演奏シーンが見たいなとややフラストレーション。でも、TVも普及前の当時、海外のジャズフェスの雰囲気を味わえる映画は貴重だったんだろうな。
レジェンドと出会える
1958年に開かれたニューポート・ジャズ・フェスティバルの記録映画で、4Kにリマスターされている。
名前しか知らない大物ミュージシャンが続々と登場する。
セロニアス・モンク、チャック・ベリー、ルイ・アームストロング、マヘリア・ジャクソン、アニタ・オデイほか垂涎ものだ。
映像がピカイチ。当時のジャズも。
Jazz と言おうか当時のアメリカの流行音楽が演奏家のみに焦点を当てたのではなく、ロードアイランドのニューポートビーチの美しい映像と雰囲気と融合していい雰囲気を醸し出している。 この1958年のニューポートビーチは知る術もないが、このフェスティバルは現在も続いていて、フォーク・フェスティバルも一緒になっているかと思う。
コマーシャルやファッションの写真家である監督バート・スターンとアラム・アバキアムという人の撮影・編集であるらしく、 ソニー・スティット(Sonny Stitt)の顔やサックスを中心に撮影する方法やモンク(Thelonious Monk )を下から映し出すところなど、大胆でカッコよく、素人の私を喜ばせてくれる。Anita O'Dayという全く知らない歌手だが、この人を含めて観客も伝統的なかっこいい身支度をしている。
チコ・ハミルトンだが名前はよく知っていたが、彼がドラマーだとは知らなかった。こんな有名人でも知らないのだからねええ。 サッチモはやっぱり偉大なエンターテーナーだと思わせるようで、話術もピカイチだ。
Jimmy Giuffre 3: Jimmy Giuffre, Bob Brookmeyer, Jim Hall
Thelonious Monk Trio: Thelonious Monk, Henry Grimes, Roy Haynes
Sonny Stitt and Sal Salvador
Anita O'Day
George Shearing
Dinah Washington
Gerry Mulligan Quartet with Art Farmer
Big Maybelle
Chuck Berry
Chico Hamilton Quintet with Eric Dolphy
Louis Armstrong and his All-Stars: Trummy Young, Danny Barcelona, and Jack Teagarden
Mahalia Jackson
この出演順のクレジットはウィッキーから。
素なのにおしゃれなせかい
imdbでも8をつけていて、日本でもむかしからジャズの好きな人々や、山の手の文化人に賞賛されていた。
わたしは田舎の百姓だが、わかいころは厨二で、スノッブな文化人の影響下にあり、釣られて見たのだろう。
映画は1958年のNewport Jazz Festivalのようすをとらえている。バートスターンは映画人というより写真家で、マリリンモンローや多くのハリウッド有名人の写真で名高い。らしい。
ストーリーもナレーションもなく、恒例らしきジャズフェスティバルを、海辺の街、ロードアイランド州ニューポートの小景をはさみながら映している。
わたしはジャズに詳しくない。Louis Armstrongがわかるていど。だが映画の魅力は発色のいい(まさにVividな)撮影と1958年のひとびとの風俗にある。
ここに映っていて、フェスティバルを見て聴いている観客は、とうぜんながら撮影用に用意したエキストラではなく、市井の一般客にすぎない。
が、かれらの圧倒的なおしゃれさ。被服、帽子、サングラス、表情、色調、動作。なにげなくとらえているはずの小景が、絵になってしまうというすごみ。全シーンが特別に装った50'sの雑誌の切りぬきのよう。
アニタオデイが白いフリルの裾をした、すこしタイトめな、ノースリーブの黒ワンピを着て、白い羽の付いた帽子をかぶって、みょうに外れた調子で歌っている。白手袋、真っ赤な口紅、そばかす、表情豊かに歌うアニタオデイ。単焦点。
撮影をしている人。リズムをとっている人。アイスを食べている人。拍手する人。かれらの笑顔。鷹揚。
たとえ仕込んだとしても、ぜったいに、こんな素敵な絵にはならない。──と思わせる風物で、全編が彩られている。
なにより、じぶんの身なりになんとプライドをもった人々であることだろう。(!)
その古き良き時代に加え、こっち側にいるのが写真家であることがはっきりとわかる充溢した絵が次から次へと展開する。
「被写体をまるごと抱きしめるが、自らは引いて存在を消す」(ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」に出てくる写真家の言葉)
意識させずにとらえられた素の世界。極上の環境ビデオ。ホームパーティで壁に映写しておくと、最高におしゃれです。
こんなアメリカに憧れていた
かつて存在した「あの時代」
この映画が、あるいはニューポートがジャズのすべてではないが、スクリーンの向こうから「This is Jazz.」のメッセージが聞こえてくるような、ジャズ・ファンにはたまらない映像である。
歴史に名を遺すような演者たちのパフォーマンスと、それに向き合う聴衆の姿は、もう帰ってくることがない過去の美しい一瞬として、切なさとともに突き刺さってきた。
演者と聴衆を代わる代わる撮っている「だけ」の映画であるはずなのだが、そこに展開される濃密で上質な音楽空間を、時代と空間を越えて共有できることに、無上の喜びを覚える。
また、この時期にロックンロールが誕生し、本作中にも、チャック・ベリーが登場する。
そして、この「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を扱った映画「上流社会」では、ビング・クロスビーが「Thiat's Jazz」という曲で、サッチモとともに”Rock'n Roll"と歌うのである。
まさにアメリカ音楽文化の最も重要な歴史的瞬間を切り取った映画である。
不覚にも泣いてしまった。
熱かった
ジャズ好きにはストレスがたまるカメラワーク
1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルを捉えたドキュメンタリー。期待して観たがジャズに対する愛情が感じられないカメラワークと編集が残念だった。
ジミー・ジュフリーのグループに参加したジム・ホールは演奏後のメンバー紹介で一瞬顔が映ったのみ。モンクは「ブルー・モンク」を弾き始めて30秒足らずで同時開催されていたヨットレースの映像に切り替わった。
まあ、音楽映画としてはストレスがたまりまくるが、レジェンドたちの’58年の姿を拝めただけで良しとしたい。
ベスト・パフォーマンスはアニタ・オデイでしょうか。チャック・ベリーもイカしてました。ルイ・アームストロング、マヘリア・ジャクソンなどは正にワン・アンド・オンリー。
大体の記憶で登場順に、
Jimmy Giuffre (Jim Hall)
Thelonius Monk
Anita O’Day
Sonny Stitt
George Shearing
Dinah Washington
Gerry Mulligan with Art Farmer
Big Maybelle
Chuck Berry
Chico Hamilton
Louis Armstrong
Mahalia Jackson
涼しくなってきたところで鑑賞
こりゃ、なんだか凄い。今はもう亡きミュージシャンたち。そして、クラシックカーに乗ってニューオリンズ・ジャズを演奏するバンド。観客の映像も多かったり、ヨットの映像も夏を感じさせてくれる。また、海岸の公園で遊ぶ子供たちを見ると、これからターミネーターが始まりそうな雰囲気も・・・
ずっとミュージシャンにスポットを当てるのではなく、コンサートで一体化した観客の様子が面白い。音楽、コンサートフィルムというより、芸術作品に近かったと思う。単なるアーカイブじゃないところなんて、市川崑監督の『東京オリンピック』みたいだった。
前半で気に入ったのはアニタ・オデイのボーカル。彼女のCDが欲しくなった。セロニアス・モンクやジョージ・シアリングといったピアニストの指の動きも観たかったのに、カメラの台数も少なかったのだろうか、このあたりは残念なところ。
後半に入ると、チャック・ベリーがまず目立っていた。ダック・ウォークなんてなかなか見る機会もないし、貴重な映像。作品は58年のコンサートだから、55年にマーティ・マクフライにロックンロールを教えてもらってからなんですね~(嘘です)。そして、サッチモ、マヘリア・ジャクソンという素晴らしいボーカルも堪能できました。
4K修復版ということでしたが、映像と音楽が合ってなかったりして、ちょっと不満点もあったけど、映像の観客とともに瞑想しながら観てしまいました。あ、音だけ聴いてた方がいいみたい。さすがにボーカル中心のミュージシャンでは映像と音がぴたり合っていたし、もうニッチもサッチもどうにもブルドッグでした・・・
私達は曲がり角を曲がってしまったのです 猛スピードで新しい時代が追い越していったのです だから今こそ本作を観る時なのです
1958年に開催された第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバルの記録したドキュメンタリー
同時開催のヨットレースも併せて少し写されています
しかし本当に写されているものは、もっともっと巨大なものでした
1960年、昭和35年8月日本公開とのことですから、ちょうど60年ぶりのリバイバル上映です
本作は大昔から大変有名な作品であるのに、DVDは廃盤でレンタルもなく、中古品が高額で取引されているのみでした
それが4Kリマスターされて、それ程に古い作品にも関わらず、鮮明な映像と音響で観る事が出来るようになり大感激です
関係者の皆様に感謝したいと思います
ニューポートはニューヨークからボストン方面に300キロほどの港町
東海岸の別荘地としても名高いところ
ちょっと遠い葉山みたいな感じでしょうか
1958年のジャズの位置付け
この頃の日活映画を観ればそれがどのくらい、時代の最先端の音楽であったかがわかると思います
石原裕次郎の「嵐を呼ぶ男」は1957年年末の作品
これをご覧になられたら一発でわかります
ちょっとおめかしをしたお洒落な大人達がクラブで楽しむ音楽です
しかめっ面して薄暗いジャズ喫茶で一心不乱に集中して聴く、そんな小難しいイメージの音楽ではないのです
今のR&Bみたいなお洒落で粋で勢いのある音楽という位置付けかと思います
1958年とは米国にとりどんな時代だったのでしょうか?
朝鮮戦争は1953年に休戦となりました
ベトナムへの軍事介入は1961年になってからのことです
東西冷戦の真っ最中ではありました
1957年のスプートニクショックがあり、宇宙開発競争がはじまりました
でもその実態はミサイルギャップと呼ばれた、核ミサイル戦力の拡充です
とはいえ、この時期は冷戦の雪解けと呼ばれて緊張が弛んでいた頃です
ベルリンの壁ができたベルリン危機は1961年のこと
キューバ危機は1963年です
そして、黒人の公民権運動が大きく盛り上がるのは1960年頃からのことです
ヒッピーの登場は1963年頃からで、麻薬禍もなかった時代でした
つまり1958年の米国は平和だったのです
太平の世を謳歌できた年だったのです
そういう年の独立記念日の前日7月3日から4日間に渡って、第5回目のジャズフェスが開催されたのです
街中浮き立っています
こざっぱりした身なりの良い人々が続々集まって来ています
当時20歳の若者は今は82歳の老人になっています
しかし映像の中の男女は若くお洒落で、現代の若者と何も変わるところがありません
ラジオのインタビューに答える話ぶりは、ついこの間録音されたものみたいです
戦後生まれ、日本なら団塊の世代、米国ではベビーブーマーはまだ幼い子供
序盤で無邪気に遊ぶ子供たちです
米国が一番幸せだった時代がフイルムに焼き付けられています
序盤はフェスが始まる午前のシーンから始まります
身なりの良い老夫婦が、年代ものの車を運転して田舎道をフェスに向かっています
ラジオはフェスで交通状況が悪化しています、皆さん安全運転を心掛けましょうと呼びかけています
老夫婦の車が、直角のカーブをゆっくり曲がっていると、遠くから大きなエンジン音が響いてきたと思ったら、最新型の大型車が猛スピードでカーブをタイヤの音を軋らせて曲がっていきます
そして老夫婦の古い車をかすめるようにして、追い越して去っていきます
遠目ながら老夫婦が怖そうにしているのが分かります
そしてラストシーン
ジャズフェスは終わり、老夫婦の古い車は夕陽に向かって真っ直ぐな田舎道をゆっくりと去っていきます
米国の幸せな時代は曲がり角にさしかかったのです
猛スピードで時代は変わっていく
どのように?
チャックベリーの登場シーンのようにです
ロックンロールのように激しいビートの世の中になって行くのです
世相も、政治も、世界情勢も
そうして、米国の幸せな時代、古き良き米国は夕陽に向かって、ゆっくりと走り去って行くのです
これこそが本作を伝説の名作にしているのだと思います
もちろん伝説の名ジャズプレイヤー達の演奏は素晴らしいものです
特にクライマックスのルイ・アームストロングのパフォーマンスは圧巻です
格の違いが際立っています
漫談師のような抜群のMCも面白く、観衆の心を鷲掴みにして、そのまま演奏でノックアウトしています
そしてクロージングはゴスペルの独唱
マヘリア・ジャクソンはゴスペルの女王です
彼女が歌う「主の祈り」です
私達は、これから米国を襲う事になる数多くの様々な試練を知っています
だから、ジャズフェス最後を締めくくるその曲が、米国に神の加護と慈悲を願う祈りとして聞こえてくるのです
染み入るのです
そして60年後の21世紀の現代
コロナ禍のパンデミック
中国との新冷戦
不安は高まるばかりです
今までの時代はまるで、本作のニューポートのようなものです
私達は曲がり角を曲がってしまったのです
猛スピードで新しい時代が追い越していったのです
だから今こそ本作を観る時なのです
演奏シーンの撮影は、21世紀の私達の目には何も驚きもありません
ごく普通のステージ撮影のように見えます
しかし、これ以前の映画で演奏シーンを写したものにこのような映像はあったでしょうか?
本作のステージ撮影の映像は革新的であったと思います
70年代のフイルムでも、このような映像はあまり見当たらないほどです
今日のライブ映像の始祖は本作だと思います
しびれる
アニタ・オデイがいかしてる。なんか痺れる。アート・ファーマーの目が逝ってる。演奏はクールなのに。マリガンが出たがり過ぎて笑える。スティットはスティットだった。いつ演っても、何処で演ってもスティット。チャック・ベリー?何で?人寄せ?4ビートのシンバルと2ビートのスネアが微妙過ぎて乗れないw
ルイ・アームストロングですよ。ビックリした。ロッキング・チェアーとか、映像と字幕付きで見ると、無茶苦茶染みるやん…
1958年の第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバルのドキュメント。
個人的には、モントルーの方が。
レジェンド達が残した盤もモントルーの方が好きかねぇ。
なんでかねぇ。
客層、かねぇ。
あ。
モントルーにはフレディーの像が立ったからか!
自己解決w
贅沢な子守唄
1958年、避暑地におけるセレブな夏フェス
ロックが社会的な認知を得る前のフェス。大人が大人のために楽しむ。セレブが集うヨットレースも同時開催されている。選ばれた人たちだけが楽しむフェス。全体的に品が良くて、出演者たちも一流のショウビジネスの世界で広く認知されている人たちばかり。天国的な世界が映像の中に切り取られている。人種も多様であり、そこに集う誰もが夏を楽しむ。金銭的な余裕がこの夏フェスを成功させているのだ。「誰もが」であっても「誰でも」ではない。「誰でも」ではなく完全に選ばれた上流階級に属する人たちのためのフェス。1958年のニューポートジャズフェスはそんな別世界での記録である。
しかし、4Kという割には音はよくても、映像が汚い。フィルムのキズが大して処理されていない。リマスターだけではなく、修復もきちんと出来なかったものか?残念な結果である。
"Newport Jazz Festival"
十五年くらい前に背伸びして映画館で鑑賞、また映画館で観られるとは、再度背伸びして二度目の鑑賞。
初鑑賞時、ルイ・アームストロングを知る位で有難いかなチャック・ベリーも登場で一安心、二度目の鑑賞も知識は変わらず、敷居の高いジャズってイメージのまま成長出来ない情けなさ。
だが変化は大有りで、二十代と三十代で観た違いは明らか、序盤のジミー・ジュフリーからジェリー・マリガン、ジョージ・シャリングと鮮明に残る演奏場面、圧巻の歌唱力が素晴らしいアニータ・オデイなど今の時代でも新しい、チャック・ベリーの「Sweet Little Sixteen」が古き良き時代の音楽でしかない存在に、どの時代で聴いても鳴っても斬新でテンポ良く速い進行に変拍子を駆使したジャズの素晴らしさ、ロックンロールを凌駕するジャズメンたちの演奏に酔いしれるのみ。
改めてサッチモの偉大さ、セロニアス・モンクの佇まい、ドラマーながら中心にいるチコ・ハミルトンなど音楽を含めた魅力にどっぷりとハマれそうな気が。。。
楽しそうだったり気怠そうだったり色々な表情を見せ優雅に過ごす人々、疎に映る黒人もチラホラと、ドキュメントよりは記録映画として字幕いらずな、写真家としての手腕が発揮された監督のバード・スターン、ハリウッドが作らなかったアメリカの芸術としての素晴らしいジャズを楽しく描いた映画。
旧チネ・ラヴィータにて初鑑賞。
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