マディソン郡の橋のレビュー・感想・評価
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不倫についての重い重い映画
クリント・イーストウッド監督。
ベストセラー小説の映画化。
中高年の恋愛をテーマにした一大叙事詩。いや、橋の上から始まる老カメラマンと中年主婦の成就できなかった大恋愛。
タイトルは気になっていたのだが、見る機会がなかった。
若い時分には本腰を入れて観る気はしないだろう。主人公たちは、あまりに歳をとりすぎている。しかし、このようなことは、いくらでもありうることなのだ。
人間の色恋についてためになる作品であることは間違いない。本来なら映画館で集中して観るのがおすすめだ。作中の物語は四日間に及び、さらに最終的には数十年に渡って続く。切ない。
60を超えたスチール写真のベテランカメラマン(独身)とイタリア出身の主婦(農婦)の恋愛物語。この設定が洒落ている。イタリアからアメリカに嫁にきた女。
ワシントンのフォトジャーナリスト。
結婚してアメリカ人になったイタリア出身の女には中高生の娘と息子がいて、アメリカの片田舎で農場をやっている。夫は生真面目な農夫。外に出る機会はほぼゼロのような生活。
決して不幸ではない家庭を捨てて恋愛をとるか、恋愛を捨てて家庭を守るかの究極の選択を迫られたフランチェスカの物語。
一応、ハッピーエンドにはなっているので、観て損した感じはしない。
死んだ母の遺品整理をしている時の娘と息子のある一日を描いている。物語は母が書いた手紙を通して語られる。母は亡くなったばかりだ。
このドラマが感動的なのは、フランチェスカとロバートは、燃える愛の炎を互いに胸に秘めながら、別れて、死ぬまで相手を思い続けたところにある。
感情の自由と美しさを教えてくれる
現実的で全く美化されていない、リアルな純愛。
「こんな確信は生涯で一度きりだ。」
これに尽きる。人生は選択の積み重ねだが、確信というのは、積み重ねたもの、守るべきもの、正しいと感じるもの、選ぶべきものから得られるとは限らない。
その確信に出会えた事がまず奇跡で、たとえ家族を置いて着いて行く選択をしなかったとしても、人生でその確信の気持ちをお互いに大切にできたことが、素晴らしいと思う。心に嘘はつけないしつく必要ないと思うから。
深入りしてしまい迂闊だ無防備だという声もあるかもしれないが、遠いイタリアの故郷を離れて元アメリカ軍の夫と田舎に移り住み、何もかも近所にあけすけで助け合いながらも平凡を抜け出すわけにいかない毎日で、家を守り家族を育てる日常だったところに、外の空気を知り故郷も知る人が現れて困っていたら、助けてあげたいしもう少し話をしたい、そう思うのは人間として自然の流れだろう。
感情に素直なフランチェスカが、私は好き。
迷い込んだロバートが男性であるがゆえに、家族と違う男性と知り合って興味を持った後ろめたさがあるからこその、摘んでもらった花束に毒草よと言ったり、世間体よりも、もう少し話したいと感じた自らの気持ちを優先させて約束を実行したり。最終的に家族との日常生活を選んだ事も、フランチェスカは心に嘘はついていないと思う。
家族が嫌で苦しかったわけでも、ロバートに我を忘れて入れ込んだわけでもなく、とても自然で、だからこそ最後まで共感できるし、人の複雑で揺れ動く定められない感情の描き方がイーストウッド監督は本当にいつも上手で天才だと思う。
イーストウッドの演技も素晴らしくて、ロバートは何にも固執せず自由なようでも、最初は、フランチェスカに対して、退屈して窮屈なんでしょう?とさも聞いて言わせたそうなロバートで、フランチェスカとの関係性にフランチェスカ側の理由を持たせたい感じもしたが、最後にはフランチェスカについてくるかどうかの選択を強制せず、相手の事情を考慮して、出た答えを受け入れる覚悟でいるところも、単純に人妻に手を出す浅はかなアウトロー人とは感じさせず、深みのある良い人だと思わせる。
薄くなった毛を雨晒しにしてでもトラックの外で待っていた時、夫と乗り込むフランチェスカを見て、どんな気持ちになっただろう?
惨めな気持ちもしただろう。
それでもそれよりも大きく、一緒にフランチェスカを連れていかれるかとは関係なく、ただただフランチェスカとの確信を感じているのも演技から伝わってくる。
メリル・ストリープも、主婦としての、家族がいる幸せを感じながらも滲み出る平凡な生活感と、女性としての、中年でも無理せず自然に出る色気、行きずりではなくロバートを女性としても人間としても真剣に好きになったからこその怒りをロバートにぶつけるところなど、仕草をはっきりと演じ分けつつ、今までの人生から得た「立場」があるから迷ってるけれど迷いでさえも「どれも本当の気持ち」というのが伝わってくる。演技が本当に本当に上手で大好きな女優さん。
人の気持ちは移ろうもので出会った時の温度も永遠ではないし、誰かを好きだ嫌いだと割り切れるものでもないし、感謝すべき当たり前な日常に気持ちが入らない時があるのもごく自然な事で、誰かに好感を抱く時って、性別や年齢や配偶者がいるかや、そういった立場を凌駕して起こるものだと思う。そしてその好感が人間としてか友人としてか男女としてかも、境目はかなり曖昧だと思う。
でも、その自然な気持ちを、周りを傷つけないため、死ぬまで心の中にしまっておいたフランチェスカは充分に配慮があると思うし、死後、自らが経験した、立場によらず人を愛した感情を子供たちに伝え、幸せになることに全てを尽くしなさい、と言葉を遺すのはとても美しい。
驚きと少しの軽蔑とショックから入った子供達も、母親が実際に経験した境遇だからこそ受け止めることができ、自らの配偶者の置かれた境遇も思いやれるようになったり、家族との向き合い方を考え直したり、心に素直になれる様子も見ていて良かったし私も同じ気持ちになった。
それがたとえ世間から見て良いとは言い切れないものだったとしても、1人の人が生きた生涯の経験や気持ちはとても美しく引き込まれる「真実」で、同じ人間だからこそ誰かの人生を知ると響くものがある。
それは、誰かのため、や、正しいから、選んだものではなく、その人の気持ちが詰まっているからこそ。
人生って実は究極に自由で、行動には立場や制限があったとしても、心が想う愛する寄り添うのは無限で自由。
そして、たとえ一緒に過ごせなかったとしても、惜しまず想えばよいしそれは必ず伝わるし、もしも一緒に過ごせる立場や環境や関係性なら、惜しまず思い切り態度に出して想えば良い。それを教えてくれた作品。
永遠に美しく
「これは生涯に一度の確かな愛だ。」
クリントイーストウッド、メリルストリープ主演。
「古き夜と遠い音楽に乾杯。」
「これは生涯に一度の確かな愛だ。」
いい言葉だ。こんな不倫ならしてみたいと思った。けど、配偶者がいて、まして子供もいるにも関わらず、40歳を過ぎてから本当の愛に目覚めてしまったとしたらきっと尋常じゃないくらい辛いんだろうな。失うもの多過ぎ。大雨の中でせっかく再会したのに、結局結ばれずに別れる2人のシーンは涙が止まらなかった。ドアに手を掛けて、そのままロバートのもとに行くことだって出来たのに。
それにしても、クリントイーストウッドはどうも苦手だ。俳優として苦手なのかな。ミリオンダラーベイビーとグラントリノのイメージが強過ぎて、気難しい役柄の印象が強い、というか、映画の世界観そのものは好きなのに、絶対にハッピーエンドにならないんだろうなって、なんとなくわかってしまう感じが苦手なのかもしれない。
メイキングでメリルストリープが言っていた、「観客は物語を感じたいのであって、説明されたくはない。感じ取り、解釈する。」という言葉に共感。
良い映画を観れた。久々に号泣しました。
【男は車のバックミラーに女のペンダントを絡ませ、そぼ降る雨の中、走り去った・・。連れ合いを持つ人ならば、”何らかの感慨”を覚えるだろう作品。クリント・イーストウッド監督の力量を確認した作品でもある。】
ー 彼のベストセラーの映画化である。ー
・男:天涯孤独なカメラマン、キンケイド。 (クリント・イーストウッド)
・女:アイオワ州の片田舎で、農業を営む夫と二人の子供と平穏に暮らす、フランチェスカ。だが、今の生活は”子供の頃に夢見た生き方ではない”と気付いている。(メリル・ストリープ)
・屋根付きの橋(Covered Bridge)で二人は出会い、徐々に惹かれ合い”四日間の恋”をして、女が葛藤を克服し別れるシンプルなストーリー。
・その、ストーリーをキンケイドとフランチェスカを描く”1965年の秋の四日間”をメインに
フランチェスカの子供たちが成人した”1989年(既に、フランチェスカは亡くなっており葬儀の場面が中心)”の風景を効果的に挟みながら、物語は描かれる。
・当時、特に既婚の女性達の間で物語は読まれ、映画化された。(物語は一応、読んだ・・。余り心には響かなかった。)
・だが、私は、上記の2大スターの姿が観たくて、劇場に足を運んだ。
・感想は、
”成程・・、分かり易いシンプルな受け入れられやすい物語をほぼ原作どおりに制作したな。”
というものと、
”優れた俳優の佇まい、身に纏う雰囲気というものは、凄いものだな・・。そして、力量のある監督が撮る映画と、小説は別物になるのだな・・。”
というものであった。
<今作鑑賞後、原作のある映画を観る際には、”原作に引っ張られすぎないように”鑑賞するスタイルが身についた作品。>
よかった
もしや、イーストウッドがメリル・ストリープと自分がいちゃつきたくてこの映画を企画して監督、主演までしていたらと思うととても気持ちが悪い。しかし、二人の醸し出す時間と空気が濃厚で見入らされる。やたらと蠅が飛んでいるのがポイントだ。そして、中年が盛ってんじゃねえよ気持ち悪いと思いつつもけっこうおもしろかった。
『4日間』~ 情念の女
これは大人のラブストーリーである。しかも大ぴらな不倫もの。
フランチェスカ( メリル・ストリープ )は遺体を火葬し、散骨すること、生前に記したノートを息子、娘が読むこと等を遺言していた。ストーリーはこの二人がノートを音読していく形式で展開する。
家族が4日間、家を開けることになり、フランチェスカは暇になるだけでなく、この異郷での
うつろな心に空しさを感じる。そこへカメラマンのロバート ( クリントン・イーストウッド ) がトラックで乗り入れて道を訪ねる。フランチェスカは丁寧に説明し、心ときめく。何の気兼ねもなくロバートのトラックに同乗し、屋根付き橋まで案内する。そこで享楽の時を過ごす。また彼を食事に家へ招く。少し無防備と思えるが、こういう事は60年代のアメリカでは普通にあったのであろう。自然の流れとして、親密度が加速して情事へと移行するのに時間はかからなかった。フランチェスカは自己のうちにうちに秘めていた " 女 " としての情欲に目覚める。肌と肌を触れあっていた二人は一線を超えてしまう。彼女は夫にない魅力に惹かれたのかもしれない。意見のすれ違いが一時あったにせよ、二人は分ちがたい仲になっていた。だがロバートが駆け落ちを促したが、彼女は家庭と家族を背に負っていることを知る故に、踏みとどまる。最後の日、ロバートは去る。家族が帰ってきたからとはいえ、彼女の心はロバートに就縛されたまま。フランチェスカの生涯で最も情念の炎に焼きつくされた4日間であったといえる。
恐怖、人妻不倫推奨映画。 夫と子供がいない間に、ふと訪れた男に欲情...
恐怖、人妻不倫推奨映画。
夫と子供がいない間に、ふと訪れた男に欲情する。純愛を装っているが、こんなの日常に不満を抱く人妻の夢見物語だよね。それが証拠に男は女を一生一途に想い続ける。あるか!現実ならそんな男は単なる遊び人でしかない。
そう、決して人妻は悪者にはならず、私に満足しつつ死んでゆくのだ。ほぼ胸糞と言っていい(笑)
受け入れるのか!子供たち。私なら絶対墓場まで持っていけ、と怒るだろう。
なんとも哀れなのは生涯付き合わされた夫である。この夫も彼女に謝意を述べつつ死んでいくのだ。なんと女に都合のいい話。
これ見て夢を見ている人妻たちよ、忠告しておこう。鉄槌を食らうぞ!(笑)
イーストウッド、ちょっと歳行き過ぎ。メリルもちょっと大きすぎ。イーストウッド、これは自分以外を主演にして欲しかったかな。そんなにメリルがよかったか(笑)
『4日間 』~ 情念の女
これは大人のラブストーリーである。しかも大ぴらな不倫もの。
フランチェスカ( メリル・ストリープ )は遺体を火葬し、散骨すること、生前に記したノートを息子、娘が読むこと等を遺言していた。ストーリーはこの二人がノートを音読していく形式で展開する。
家族が4日間、家を開けることになり、フランチェスカは暇になるだけでなく、この異郷での
うつろな心に空しさを感じる。そこへカメラマンのロバート ( クリントン・イーストウッド ) がトラックで乗り入れて道を訪ねる。フランチェスカは丁寧に説明し、心ときめく。何の気兼ねもなくロバートのトラックに同乗し、屋根付き橋まで案内する。そこで享楽の時を過ごす。また彼を食事に家へ招く。少し無防備と思えるが、こういう事は60年代のアメリカでは普通にあったのであろう。自然の流れとして、親密度が加速して情事へと移行するのに時間はかからなかった。フランチェスカは自己のうちにうちに秘めていた " 女 " としての情欲に目覚める。肌と肌を触れあっていた二人は一線を超えてしまう。彼女は夫にない魅力に惹かれたのかもしれない。意見のすれ違いが一時あったにせよ、二人は分ちがたい仲になっていた。だがロバートが駆け落ちを促したが、彼女は家庭と家族を背に負っていることを知る故に、踏みとどまる。最後の日、ロバートは去る。家族が帰ってきたからとはいえ、彼女の心はロバートに就縛されたまま。フランチェスカの生涯で最も情念の炎に焼きつくされた4日間であったといえる。
このようなロマンチックでドラマチックな胸が震える瞬間の記憶がある人生の経験があなたにはありますか?
公開当時は内容を聞いて本作の息子のような印象を受けて観もせず毛嫌いをしていました
しかし自分もそれなりの年となり、この映画を自ら観てみたいと思える大人になりました
痛いほどセリフやシーンが心に刺さりました
若い時に観てもやはり全く理解できなかったでしょう
結婚し家族を持ち子供達を育てた年月があったからこそ、本作の素晴らしさ、言わんとすることを受け止められるのだと思います
デビット・リーン監督の名作「逢びき」のように号泣することはなかったのですが、心に染み入る深さと震える余韻はそれを上回るほどです
クリント・イーストウッド65歳
メリル・ストリープ45歳
老人と中高年のカップル、
そして年の差は20歳もある設定です
絶対に交差しようのない二人なのです
なのに交差してしまう
二人がもはや若くない、恋愛なんかもう関係ないと思っていたのに
だからこそ、この恋愛が確かなものなのです
むしろ若い時のような激情が少ない分より純粋なのです
二人の演技は超絶的です
男女の不思議な化学反応を全く自然に再現して見せてくれます
特にメリル・ストリープの役作りは素晴らしく
だらしなく体型の崩れてくたびれた中年主婦そのもの
その同じ女性がみるみる美しく可愛く見えてくるのだから不思議です
不倫のお話といえばその通り
カフェでルーシーを見る町の人々とおなじ視線を向ける方も多いと思います
しかし、本当の恋愛なのです
それも生涯でただひとつの
それに出会い、それ育てるチャンスがあるかないかの差だけで、だれしも可能性のある話のなです
むしろあった方があなたの人生は豊かであると思います
ときめきだけなら誰にもあるはずです
ラスト近く、ドアハンドルに手をかけるフランチェスカ
青信号に変わっても彼の車は彼女を誘うように止まったまま
やがて左折して去っていきます
その前の雨の中立ちすくすロバートのシーン
泣いているようにもみえます
このようなロマンチックでドラマチックな胸が震える瞬間の記憶がある人生の経験があなたにはありますか?
何もないまま日常を繰り返し老いて死んでいく
それだけの人生が幸せなのでしょうか?
本当に生きたと言えるのでしょうか?
ラジオから流れる甘いブルースの数々
台所でのダンスシーンは心が震えました
本当の恋愛を知り、そして分別も忘れない
深く愛し、その愛を大事にしたいからこそその愛を思い出にする
思い出だからいつまでも美しいのです
その思い出を反芻しながら生きて行けるのです
そんな大人の二人の物語だからこそ多くの人々に 愛された物語なのでしょう
ラストシーンの息子の晴れ晴れとした顔が嬉しく心に残りました
平凡な主婦が女を取り戻す話
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