劇場公開日 1995年9月15日

「このようなロマンチックでドラマチックな胸が震える瞬間の記憶がある人生の経験があなたにはありますか?」マディソン郡の橋 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0このようなロマンチックでドラマチックな胸が震える瞬間の記憶がある人生の経験があなたにはありますか?

2019年4月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

公開当時は内容を聞いて本作の息子のような印象を受けて観もせず毛嫌いをしていました
しかし自分もそれなりの年となり、この映画を自ら観てみたいと思える大人になりました
痛いほどセリフやシーンが心に刺さりました
若い時に観てもやはり全く理解できなかったでしょう
結婚し家族を持ち子供達を育てた年月があったからこそ、本作の素晴らしさ、言わんとすることを受け止められるのだと思います
デビット・リーン監督の名作「逢びき」のように号泣することはなかったのですが、心に染み入る深さと震える余韻はそれを上回るほどです

クリント・イーストウッド65歳
メリル・ストリープ45歳
老人と中高年のカップル、
そして年の差は20歳もある設定です
絶対に交差しようのない二人なのです
なのに交差してしまう
二人がもはや若くない、恋愛なんかもう関係ないと思っていたのに
だからこそ、この恋愛が確かなものなのです
むしろ若い時のような激情が少ない分より純粋なのです

二人の演技は超絶的です
男女の不思議な化学反応を全く自然に再現して見せてくれます
特にメリル・ストリープの役作りは素晴らしく
だらしなく体型の崩れてくたびれた中年主婦そのもの
その同じ女性がみるみる美しく可愛く見えてくるのだから不思議です

不倫のお話といえばその通り
カフェでルーシーを見る町の人々とおなじ視線を向ける方も多いと思います
しかし、本当の恋愛なのです
それも生涯でただひとつの
それに出会い、それ育てるチャンスがあるかないかの差だけで、だれしも可能性のある話のなです
むしろあった方があなたの人生は豊かであると思います
ときめきだけなら誰にもあるはずです

ラスト近く、ドアハンドルに手をかけるフランチェスカ
青信号に変わっても彼の車は彼女を誘うように止まったまま
やがて左折して去っていきます
その前の雨の中立ちすくすロバートのシーン
泣いているようにもみえます
このようなロマンチックでドラマチックな胸が震える瞬間の記憶がある人生の経験があなたにはありますか?

何もないまま日常を繰り返し老いて死んでいく
それだけの人生が幸せなのでしょうか?
本当に生きたと言えるのでしょうか?

ラジオから流れる甘いブルースの数々
台所でのダンスシーンは心が震えました

本当の恋愛を知り、そして分別も忘れない
深く愛し、その愛を大事にしたいからこそその愛を思い出にする
思い出だからいつまでも美しいのです
その思い出を反芻しながら生きて行けるのです
そんな大人の二人の物語だからこそ多くの人々に 愛された物語なのでしょう

ラストシーンの息子の晴れ晴れとした顔が嬉しく心に残りました

あき240