「第二次オイルショックと、キャンベルが唱えた英雄譚の構造を組み合わせると、最高のアクション映画になる。」マッドマックス2 あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
第二次オイルショックと、キャンベルが唱えた英雄譚の構造を組み合わせると、最高のアクション映画になる。
非常に面白い。
冒頭で2つの大国の戦争が原因で世界が荒廃したというナレーションがある。
これは、1970年代末から80年代初頭の第二次オイルショックと、1980年9月22日からはじまったイラン・イラク戦争を意味しているのだろう。
そこから、石油が貴重になり、暴走族が暴れるという、多くの人が「マッドマックス」と聞いてイメージする世界はここからはじまった。
製作費は当時の相場で6億4千万円。興行収入は56億円。
ちなみに前作は制作費は約3千万円。興行収入は210億円
前作がヒットして予算がアップしたものの、それほどヒットしなかった模様。
ストーリーとしては、
荒野にある石油精製所がヒューマンガス率いる暴走族に狙われている。
マックスはガソリン目当てで精製所の人間とかかわるが、結果的に彼らが精製所から理想の土地に脱出する手助けをすることになる。
といったもの。
ジョージ・ミラーは、ジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』を参考にしたらしい。英雄が使命を受けて戦い、敵を倒して勝利をおさめる、というプロットは、たしかに本に書いてある通りだ。
石油精製所の人々はすばらしいリゾート地のパンフみたいなものを持っていて、「この土地で暮らすんだ」とマックスを誘う。断ろうとするマックスに「きみはこのままでいいのか!」などと言いよる。宗教団体や自己啓発セミナーなどでありそうな誘い文句だ。あるかどうかもわからない理想の土地を目指すというのは、無謀とも言える。一方ヒューマンガス率いる暴走族は単純に石油を求めて襲ってくるだけで、野蛮というか、原始的である。
どちらもどちらだと思うので、マックスがガソリンだけ手に入れたら、あとは関わらないようにしようとするのは賢明というものだろう。結局は手助けせざるを得なくなるのだが。
タンカーを運転して約束の土地を目指して突っ走る姿は、出エジプト記のモーセとイスラエルの民を連想させるが、それは深読みしすぎかもしれない。
石油精製所の人たちは食べ物をどこで手に入れていたのかとか、マックスはなぜ最終的にタンカーを運転する気になったのかとか、疑問点はあるが、作品の面白さを損なうものではない。
また、ジョージ・ミラーの画面の絵作りのうまさも見どころだ。普通の映画と違って、迫力を追求した絵作りはマンガ的で、観ていて感心する。
唯一無二の世界が徐々に形成されていくのを振り返ることができてよかった。