劇場公開日 1998年5月9日

「社会保障を疎かにすると、かえって治安対策の費用がかかりそうだ」マッド・シティ 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0社会保障を疎かにすると、かえって治安対策の費用がかかりそうだ

2024年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 マスコミが視聴率向上のために事件や事故を取り上げて、センセーショナルな報道を行うのは日本も同じだ。彼らも生活がかかっているので、やむを得ない部分もあると思う。しかしダスティン・ホフマン演じるマックスは違った。自分の利益を考えつつも、犯人や人質、警察や世論のことまで考えて最善策を打とうと努力した。しかし、彼の力が及ぶには事態は大きすぎたのだ。

 犯人のサムは、自身の雇用主である館長に解雇の抗議を行った際に銃を持ち出した。それは一見すると馬鹿な行為に思える。しかし、そのような行為に及ぶほど彼は焦り、冷静な判断力を失っていたのだろう。自分のことだけを考えるのでさえ大変なのに、彼には家族がいる。その結果長期的な視点を失い、つい銃を突きつけてしまった。

 やはりアメリカのような実力主義の社会においては、彼のような窮地に立たされてる人間を救済するための社会保障は、あまり予算が割かれていないのだろうか。ホームレスが大勢道端にいる動画がYouTubeにもよく上がっていることを考えると、多分そうなのだろう。それが治安の悪化を招き、今作の事件のようにかえって警察の出動などの対策費用が嵩みそうなのだが、どうなのだろうか。

根岸 圭一