街の灯(1931)のレビュー・感想・評価
全52件中、21~40件目を表示
普遍的な笑い
制作時、チャップリンは42歳。コメディって「8時だよ、全員集合」のドリフターズもそうだったけど、体力勝負なところがあるよなー、と思う。
Wikipediaによると87分の映画だけど製作に3年を要した。盲目の花売りの女性の最初の出会いのシーンだけで1年以上かけて撮り直しとは、ほんと、周りの人も大変だったろうなぁ。
アートショップの前の道路でチャップリンが、工事中の道路の穴に落ちそうで落ちない、を繰り返すぎりぎりの面白さ、そのあとに下からせり出した来た男が最初身長が分からなかったけど実は大男だった、酔った金持ちが酔った時にしか友達としてのチャップリンの記憶がない、ボクシングの試合会場でのやりとりなど、普遍的な笑い。計算されてるよなー、って思う。そして何回これをカメラの前で繰り返したんだろうってことも。男性が自殺を止めるシーンは特に大変だったろうね。何回ずぶぬれになって撮り直したんだろう。
日本では体形や見た目をお笑いのネタにするのが多い。でも最近アメリカではそれは時代遅れになってきているそうな。なんでもアメリカが良い、とは言わないけど、結果的にそういう流れになっていくんだろう。そうすると本来の笑いのセンスだけでの勝負が必要となってくる。本来の笑いとはそうあって然るべき。チャップリン映画を見てそう思った。
無償の愛のサイレント映画、チャールズ・チャップリンの永遠の名画
いつもの様に監督・脚本・製作・音楽・編集・主演の全てを熟すチャールズ・チャップリンの実質的なサイレント映画の最後の名作。個人的には特に感銘を受けた「黄金狂時代」をベストワンに推すものの、「キッド」とこの「街の灯」をチャップリンの最高傑作として一緒にベストワンにしたいのが正直な気持ちだ。「キッド」における(親子の絆と愛情)、「黄金狂時代」の(極限状態に追い込まれた人間の生と欲への執念)と続いて、この作品では(無償の愛)を飾らずシンプルに、そして感動のラストシーンで魅了してくれる。
全てのシーンを讃えたいが特に素晴らしい演出と演技のシーンを挙げれば、まず盲目の花売り娘が放浪者チャーリーをお金持ちの紳士に勘違いするところ。この場面は試行錯誤の繰り返しで何回も撮り直ししたことで有名だ。お釣りを返そうと花売り娘が手を差し出した先で紳士を乗せたタクシーが走り出すのをパンして、花売り娘が手を戻す。それを見ていたチャーリーが靴音を立てないよう後退りするところまで。この短いワンカットが物語全体の核になる。簡潔にして雄弁なる表現の精緻さ。更に偽装したチャーリーがウットリと彼女を見詰めるところで、水替えをする花売り娘に水を掛けられるオチの自虐ユーモアの可笑しさ。チャーリーが富豪の紳士とクラブで豪遊する最初の場面では、ダンスペアの演出を理解しないで男性ダンサーを足蹴りするし、目の前に現れた見知らぬ貴婦人のお相手をしないといけないと勘違いして激しく踊りだす。細かいギャグが次から次へと構成されていて飽きさせない。また、花売り娘がチャーリーを富豪と勘違いするのに対して、本当の富豪の泥酔した時と素面の時の放浪者に対する対応が真逆で、その落差を巧みに物語の展開に生かしている。高級車に乗ったチャーリーが、落ちた葉巻を拾おうとした放浪者を押しのけて奪うシーンの可笑しさ。悪びれない顔で去るチャーリーと唖然とした放浪者の対比がなんとも可笑しい。
後半は花売り娘の為にお金を工面するチャーリーの涙ぐましい奮闘ぶりが最上のユーモアとペーソスで表現される。チャーリーが彼女の家賃滞納を知る場面では、間違ってチャーリーの服の毛糸を丸めるのをそのままにして見過ごすのがある。(無償の愛)を形にして眼に見せた印象的なギャクだ。そして、この作品の笑いのクライマックスにして、チャップリンのサイレント映画の結晶と言っていいくらいのボクシングシーンが何といっても素晴らしい。天才チャーリーしかできない抱腹絶倒のパントマイムの至芸。試合前の効果のない御まじないと対戦相手の強さを強調するところも面白い。演出で興味深いのに、ワンカットだけドイツ表現主義と言うかフィルムノワールのようなカットがある。それは富豪の邸宅から大金を持って二階に逃げようとするカットだ。この演出を見ると、チャップリンはシリアスな映画の演出でも一流の冴えを持っていることが分かる。
映画史に遺る名ラストシーンはもう言葉では表現できない。これは、淀川長治さんの解説を読むか聞くしかない。ガラス一枚を挟んだ対比の見事さを淀川さんから教えられた。
淀川さんのサイレント映画のお話の中で、とても印象的な解説があり忘れられないものがある。映画のタイトルは失念したが、主人公は両親を亡くして祖母に育てられた娘さん。娘は年頃になり、好きな人が出来て彼氏を紹介するために祖母に会わせる。ただ、その祖母は盲目だった。孫娘に紹介されたその青年の前に進んだ祖母は、彼の手を握りながらひとこと。これは働く人の手だ。安心して喜ぶ祖母の姿。
眼が見えない人は、残りの五感が研ぎ澄まされる。それを上手に表現したサイレント映画らしい表現でとても感心し感動を受け、今でもたまに思い出してしまう。イタリア映画には、「悪い奴ほど手が白い」というタイトルの社会派映画があった。私の好きな監督エリオ・ペトリ作品。手を見てどんな職業かを正確には当てられないが、手のまめや厚み、汚れなどにその仕事の内容が幾らか反映されると思う。
花売り娘がチャーリーの手を握り感触を思い出すことが、如何に自然か、そこが凄い。
最後に、新聞の立ち売り少年を演じたロバート・パリッシュの逸話からひとつ。パリッシュ少年は後に監督になり、「決死圏SOS宇宙船」というB級映画を撮った人。チャップリンは少年たちの演出をした時、放浪者と花売り娘そして新聞少年の全部の役を演じて見せたという。たぶん映画の全ての役を演じることが出来たと思う。”全部自分でやってしまいたかったのだろう”とパリッシュは述懐している。ヴァージニア・チェリルとパリッシュ少年たちの前で披露したチャーリーのワンマンショウ。これも凄い。また、「ライムライト」のエピソードでは、撮影前にすでに60曲のオーケストラ音楽が完成されており、逆ではないかの質問に、”馬鹿な。私の演技に合わせて棒を振れる指揮者がいるわけがないじゃないか”と答えたという。 これもまた凄い。
『わがハリウッド年代記』 鈴木圭介訳 筑摩書房より
自分の想像力で笑う
初のチャップリン&サイレント映画。
慣れないので初めはどう観たらいいのか…戸惑いまくり。とりあえず観ていたら違和感を忘れてました。花売りの女性が登場してからは、流れが掴めるしおもしろくなるので、とりあえずそこまで観て欲しい!
笑わされるというより自分の想像力を掻き立てて笑うところが、今までにはない最大の魅力!
笑いだけでなく、チャップリンの人情味溢れるところにもじんわり感動。
コメディ部分は確かに古典的ですが、大変完成度がとにかく高い!圧倒!今でも愛され喜劇王と言われるのは納得だ〜!
誰が観ても嫌な気分になるような内容ではなく、世界中の老若男女が笑顔になれる映画。タイトルの街の灯のように、心に灯を灯してくれるようなストーリーでした。
とはいえ、サイレント映画なので今の時代ではインパクトに欠けるのは否めません。なので、観る人を選ぶと思いますが、逆に新鮮味を感じて楽しんで観てもらえたら嬉しいです。
ラストシーン
あのアインシュタインがラストシーンで泣いていたという逸話もある名作。いまさら天才チャップリンを評するなどおこがましいのだが絵に描いたような美談を嫌味なく笑いを交えて描けるのだから凄いですね。主人公は悪い人ではないのだが聖人君子でもなく、頑張ってもそう容易くはお金が転がり込まない展開もある種リアリズム、庶民の感情をよくも悪くも十分心得ていて魂を掴む心憎い脚本・演出には脱帽です。ただ、この物語を今風に撮ったら興醒めかもしれません、ベタな話を堂々と描けるのも白黒・サイレントの魔法の力なのかもしれませんね。
彼女は心の目で見ていたからなのでしょう、風体でなく恩人と見定めるラストは映画史に語り継がれる名シーンでした。
素晴らしかった
大学生の時に初めて見て、ラストシーンのヒロインがチャップリンを見る目に、蔑みや落胆を感じてあまりのリアリズムにショックを受けた記憶がある。しかし改めて今回見たところ、ヒロインの目には蔑みや落胆だけではなく、純粋に驚いている感じや感謝の気持ちなどいろいろな複雑な感情が込められているように感じた。
また、先日クッキーを食べようとしたらそれが石鹸だった事件があり、同じ場面があったことに驚いた。石鹸を食べたおじさんは口からシャボン玉を出して怒るばかりで、一向にうがいをしない。冒頭の石像の場面やボクシングの場面が最高だ。
とにかくめっちゃくちゃ面白い。
Yes, I can see you now. 歴史的価値がある映像
ヤベェ、ステッキぐるぐるしたくなる。でも、ステッキなんて持ってないんで傘をぐるぐるしたくなる(←迷惑)。
サイレント映画自体あまり観た事がなかったのですが、有名なチャップリンの名作なので一度は観とかないとっと思って観賞してみました。声がない分、体の動きと表情で色々と訴えてくるのがスゴいですね。今ならオーバーアクトになってしまう演技でも、観ている人が誰でもわかるようにするにはアレぐらいでちょうどいいのでしょう。言葉がないけど逆に言葉の壁を乗り越えてる感じです。
しかし、チャップリンの動きはスゴいですね。あのヒョコヒョコした特徴的な歩き方といい、ボクシングのシーンでレフェリーの後ろにピッタリくっついて回る動きといい、映画を観た人の記憶に残りやすいように良く考えてあるなっと感心します。
チャップリンってもちろん才能も凄かったんでしょうけど、ユーモアがある体の動きを物凄く考えていたんでしょうね。メチャメチャ計算してありそうな動きです。自殺を止めるシーンもそうなんですが、頭使って体張ってる感じですよね。今みたいに娯楽が飽和していない当時の人は大爆笑だったのではないでしょうか?
背後に写ってたりする約90年前の風景がとても興味深いです。1931年って信号機無かったんですね。蓄音機がカッコいい。テレビがない時代っというか、やっとラジオが普及してきたぐらいの時代の映画って良く考えるとスゴいなっと思います。なんだか歴史的資料としても後世に残す価値があるなっと思いました。
いつ観ても泣ける
不況の波は弱者に厳しい。チャーリー本人と、祖母と二人暮しの美少女。そして対照的な存在が、自殺を思いとどまった金持ち。彼の存在は金持ちに対する風刺とユーモアにあふれている。
少女との出会いのシーン、車のドアが閉まる音と少女が彼を金持ちだと勘違いする。300回も撮りなおしたという有名なシーンだ。その他、全てのエピソードにチャップリンの完璧主義者を思わせる絶妙なタイミングが散りばめられている。金持ちの自殺のシーンは、その後のコメディで多く取り入れられているくらいコメディアンにとっての基本のような構図。ボクシングで笑わせるシーンは大好き。車をもらって金持ち風になったのにシケモクを拾うために男を追いかけるところも秀逸。貧乏臭さが漂っています。
ラストは、サイレンス映画なのになぜここまで心に訴えてくるのか・・・何度観ても、自然に涙が出てきます・・・
笑えて泣けるラブストーリー
哀愁漂う曲が流れる中、チャップリンのコミカルな演技で笑いを誘いつつ、メインテーマであるロマンスのエピソードで泣かせる(T‐T)
1931年に、こんなに笑って泣ける映画が作られてたなんて、凄すぎる(^_^;)
それをチャップリンほぼ1人で作り上げてしまったという…
天才とは、こういう人のことを言うんだな…
うちの娘が大好き(どうだ、シブいだろ(嫌がらせ弁当風 笑))と聞い...
うちの娘が大好き(どうだ、シブいだろ(嫌がらせ弁当風 笑))と聞いて何十年ぶりかに見返した。
冒頭の除幕式からもう面白い。そこからは無音声ギャグの波状攻撃。
・酔っぱらうと親友になる金持ち。シラフの時の扱いがひどい。
・ハチャメチャボクシング
そして核になる花屋の娘への好意。切ないラスト。ただの笑いだけじゃない。すごい作品です。
【無償の献身】
- 名作中の名作であるので、久しぶりに鑑賞した感想のみを記す。-
・自分自身が貧しいのに、目の不自由な花売りの娘を助けようと奮闘するペーソス感も漂う貧しいが心優しき男の姿。
・富豪の男が自死を止めて貰ったお礼に”酔っぱらっているときだけ”男を”親友”と思う設定の絶妙さ。
(だって、素面になると忘れて、酔うと思い出すって有りえないでしょう?だが、この設定が今作の可笑しみを高めているのだから、チャップリンの脚本というか、人物設定が素晴らしい)
・お金を稼ぐためにいかさまボクシングに出るシーン。
ー 個人的に”白眉”のシーンー
レフリーの後ろに隠れながら、ちょいちょいジャブを繰り出し、そのうち、レフリーと男と相手の3人の変なダンスに見えるシーンは何度観ても、笑う。
・娘の毛絲を巻くお手伝いのシーン。
いつの間にやら、自分の衣服の毛絲が巻き取られていくのに、(娘は見えない・・)困ったなあという顔をしながらも最後まで巻き取られてあげる男の表情。
・富豪の男から貰った大金を娘に渡すシーン。
家賃が払えず、困窮する娘に、最初は一枚だけ自分のポケットに残し、他は全て与えるが、最後にはその一枚も渡す場面。
ー このシーンの前に映し出されていた壁新聞の”目を直す医者がいる”というシーンが活きて来る・・。ー
・男が”泥棒に間違われて”警察に捕まり、刑務所から出て来て、(身なりは一層貧しくなっている。)街角で花売りの娘と再会するシーン。
目が見えるようになって立派な花屋を営んでいる娘は、最初男が誰だか分からないが、男の手、身体を触って気付き、”自分と母親を助けてくれた男”をその治った目で見つめるシーン。
何度観ても良い・・。
<心底疲れる毎日を送っているが、朝刊でNHKが今作を放映することを目にし、ビデオ録画し、帰宅後、夜中に鑑賞。
現在、身を呈しての活動を日々行って頂いている医療関係者の多くの方々の姿が脳裏に過った・・。
本当に有難うございます。
”一刻も早い終息を願いつつ。”>
世界一の紳士。人生は喜劇だ!
チャップリンの最高傑作であり真骨頂な作品。
普遍の「愛」を笑いあり涙ありで表していて、チャップリン度100%!
ボクシングのシーンは爆笑!
作品を思い出すだけで何かが込み上げてくる。
脚本が素晴らしい
☆久し振りに鑑賞☆
映画を好きになるきっかけになったチャップリン。
久し振りに観た「街の灯」…。笑いと感動で胸が一杯になりました。
大体、チャップリンの役柄は、貧しいけれど心は豊かで紳士なんですよね。
盲目の花売の女性に恋心を抱き、彼女の目を治療する為に奮闘する。
そこに絡んでくる、金持ちの男のなんたるや(笑)!
結局、彼のお陰?で、花売の女性の借金や何やらを返済出来たんだけど(笑)。
とにかく、最後は涙なくしては観られません(泣)。
彼女は、治療費等を出してくれたのは ミリオネアだと思っていたけれど、みすぼらしい格好で佇む男性が その人だと気付いた時の感動は、未だに涙涙…です(泣)。
あの目。口元。指先。
ドタバタのコメディシーンは古典的と思いつつ、つい引き込まれて笑ってしまう。
そしてラストの場面。あのやりとり。あのチャーリーの目、口元と指先、仕草、表情。言葉に出来ない事を言葉以上に豊かに物語る。人は温かく幸せで、哀しくて滑稽で残酷で、愛おしくて切ない。そして幕がおり、深く心の襞に染み入ってくる余韻にどっぷりと浸りきって夜の海に流されてしまいそうになる。
あの場面とこの余韻のために全てが整えられていたように感じます。約20年振りに観ましたが、より味わい深く感じました。また歳を重ねてから観るのが楽しみです。
絶妙なエッセンスの機微がたまらない作品
チャップリンの映画が世界的に評価されるのが抜群にわかる作品。
必要なものがないから、伝わるものや感じるものが多くあると気付かされる。
今でも評価が高いのは、嬉しい。やっぱ、いいものはいいってことですね。
色あせないラブストーリー
少年の頃はただただ面白く彼の動きでゲラゲラ笑ってた
青年になり思いやりや優しさに気付いた
この歳になりやっと愛情の深さに涙するようになった
明日になれば鳥たちもさえずるだろう
どうしても観たくなる映画
ボクシングの試合覚えてますか!
ロッキーやレイジングブル、はたまたクリードすらも超越するほどの対決
やはりチャップリンはアクションも素晴らしい!
この作品の一つだけでもどれだけのアイディアが詰め込まれているのでしょうね
歩道のエレベーター、富豪との出会い、チャーリーを富豪とどうして思ったか
そして、再会
チャップリンは非喜劇の王様だと思います、山田洋次監督も素晴らしい、三谷幸喜さんも天才
みんなチャップリンを見ているはずですよね
アインシュタインはこう言ったそうです
「あなたの芸術は素晴らしい。全く言葉を使わずに、世界中の人にあなたは理解されてい るのですから 」
チャップリンはこう返したのです
「博士こそもっと素晴らしい。なにしろ世界中のほとんどの人があなたの相対性理論を理解できないのに、あなたは世界一の有名人なのですから」
彼の作品をちょくちょく見直していこう
全52件中、21~40件目を表示