劇場公開日 1957年12月24日

「大傑作犯罪コメディ」マダムと泥棒 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5大傑作犯罪コメディ

2025年6月17日
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文句のつけようがない大傑作犯罪コメディ。

お節介でお人好しの未亡人マダムの家に「教授とその友人」を騙る強盗集団が住み着いてしまうという単純な筋立てだが、とにかく映像が凄い。

素朴な部屋に注意深く配置される人物とオブジェクト。そして思いがけぬ位置からゆったりと動き出すカメラ。視覚的な動性と混じり合うことで会話劇は演劇を離陸し、映画へと羽ばたいていく。

特にオウムというオブジェクトが素晴らしい。人物の間に挟まって空間の立体性を強調したり、時には物語の前面に躍り出て場を引っ掻き回したり、モノとヒトの間を絶えず往還する放埒さが清々しかった。

終盤に繰り広げられる自滅劇は圧巻だ。リズミカルなカッティングと音響効果によってどうしようもない惨劇をあくまで喜劇的に描き出す。マダムの自宅の後ろにある線路を用いた一連の活劇も最高だ。画面に漲る緊張が機関車の煙によって一時的に弛緩し、それが消えた瞬間にまた緊張が走る。この繰り返しこそが活劇のキモだろう。

アレクサンダー・マッケンドリックという監督はあまりにも埋もれすぎなんじゃないかと思う。もっと他の作品を観てみたい。

因果
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