劇場公開日 1955年12月15日

「21世紀の今の日本にこそ必要な物語です」マーティ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.021世紀の今の日本にこそ必要な物語です

2019年7月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

素晴らしい映画に出逢えた幸せを感じます
こんなに美しい恋愛映画はありません
心から感動しました

主人公のマーティは34歳
ネットで今話題の子ども部屋おじさん
小太り、ブ男、高卒、下町の肉屋の店員
本人も自覚する非モテキャラです
同居の母親からも、肉を買いに来たお客さんにまで口ぐちに早く結婚しろ、なぜしないのよ?と言われてへこむ毎日
仕様がないと諦めてもいて、地元の非モテグループとつるんでグダグダと週末を過ごしています

正に現代的な設定です
21世紀の今の日本にこそ必要な物語です

主演のアーネスト・ボーグナインの演技が素晴らし過ぎます
クララに知り合って舞い上がり話が止まらなくなる姿
キスを拒否されて消沈してへこむ姿
別れ難くいつまでも一緒いて、深夜に彼女の家までバスで送り、家のドアの前で明日も会いたいと握手して別れる姿
どのシーンも見事です、いとおしいです

クララ役のベッツィ・ブレアもまた素晴らしい見事な配役でした
確かに美女ではありません
イモだのなんだのとさんざんな言われようですが、最初の登場シーンで遊び人の男がパッとしないが十分魅力的じゃないかと言う姿形、雰囲気にピッタリはまっています

29歳の高校教師の役です
奥手で真面目の設定どおりの知的な面立ち
痩せすぎで胸も腰も尻もペッタンコです
地味で母親からももっと年がいってるはずとけなされます

だけど彼女の笑顔は男の心が晴れる笑顔です
この人となら人生を一緒に歩き続けたい、全力で取りに行きたいと思える女性の姿形です

クララを見た次に、車のバックシートにもたれる遊びなれた看護婦の顔を見、その声を聞いたとき、マーティだけでなく私達観客も、その決定的な違いを実感させられるのです
本当に絶妙で奇跡のような配役と言えるでしょう

クラブで男から取り残され、選ばれない自分への情けなさ惨めさに泣き出しそうな表情
マーティからの約束の電話が来ず打ちのめされつつ、微かにまだ期待しているその表情
共感と説得力がありました

34歳と29歳の男女
現代の日本なら全然適齢期です
しかし当時ならそれよりプラス5歳、いやプラス10歳の今の日本なら44歳と39歳のカップルの物語のイメージだろうと思います

この非モテカップルの恋の行方だけでなく、嫁姑問題と親放れや、親の子放れの問題も描かれます
マーティに彼女ができたとたんに、その彼女のことをことさらに悪くいいだす教会の前でのシーンや実家の家でいいあう叔父夫婦はまるで米国版の渡る世間は鬼ばかりでした

エンドマークが出た時、拍手をしてしまいました
それはマーティの変化に、そして見事な作品に対しての拍手です
恋愛に遅いなんてありません
マーティとクララの幸せを確信して暖かい心が残りました

是非、現代の東京を舞台にしたリメイクを観たいと思います

あき240