劇場公開日 2014年3月1日

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「打ち上げコイン、表に張るか?裏に張るか?」ボルサリーノ ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0打ち上げコイン、表に張るか?裏に張るか?

2023年12月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

幸せ

「勝負に出るか?」
「よし!」

何度観ても好きな要素しかねぇ。
この作品がなければ、僕はボルサリーノのソフト帽を買うことはなかった。今でも鏡の前で被っては、ツバを指先でなぞっている。それくらい擦りに擦った作品で、話の展開も知っているから今更劇場で観る必要もないかなと思いつつ、やっぱり観てしまった。
もうタイトルを耳にするだけでクロード・ボランの軽快なスコアが頭に浮かびワクワクするし、なんてったって野郎どものスーツの着こなしを目にするたびに「自分もこれくらいビシッと着こなしてみたい」と憧れる。そしてスーツを新調しては、またスーツに着られる生活が始まるのである。
それまで「フランス映画はアラン・ドロン」とドロン一辺倒だった僕にベルモンドが「待った!」をかけたのが今から15年前、本作を初めてTVで目にした時だった。当時僕は17歳、途中から観たのでずっと「全編観てみたい」と思いながらもなかなか機会に恵まれず、やっとの思いでDVDをレンタルして観たのが5年前のことだった。正統派のドロンに対して、どこか陽気でクセになるベルモンド…ボクシングで創り上げられた独特のマスクが忘れられない。最後に見たのは出川哲朗が番組の企画でベルモンド邸にピンポンダッシュした際の姿だった。病気をした後だったため少し弱っていたが、それでも往時の笑顔は健在だった。いなくなってしまったのが本当に寂しい限りである。
寂しいといえば、日本人に限ればもうひとつ寂しい話がある。本作を観るとどうしても山田康雄と野沢那智の声が聞こえてくる。しかしながら、生前収録されたのはTV放送用に編集された映像分だけであるため、全編通しての音源はそもそも存在しない。あの軽やかな声で全編通して観てみたい。AIが進歩した現代ならもう少し時間をかければ不足分は補完できるかもしれない。その日が来るまで、オレはツキに見放されるわけにはいかねえのさ。

ストレンジラヴ