「The Master of Suspense」北北西に進路を取れ Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
The Master of Suspense
The Master of Suspenseと称される、世界で最も有名な映画監督の一人、アルフレッド・ヒッチコック (Alfred Hitchcock)が今日の先生です!
彼の映画制作における技術は、無数のフィルメーカーたちに影響を与えてきました。
その中でも今日は、サスペンス映画になくてはならない、ストーリーテリングの部分について取り上げて見ましょう。
サスペンス映画の監督といえば誰を思い浮かべますか?
今あなたが思い浮かべたほぼ全ての映画監督、また映画はヒッチコックが証明して見せたテクニックを使いまくっています。
あげだしたらきりがないのですが、カメラワークからブロッキング、そして編集に至るまで映画の水をなす部分でサスペンス界の常識を作り上げたことは間違いないです。
「ミステリー小説が好きな人!」「はぁーーーい!」
ミステリー小説が好きな人は、何が好きかって、とても複雑に入り組んだミステリーが一つ一つ紐解かれていくところ。人が一人ずつ死んでいくのが好きっていう人は、それはもうホラー好きかサイコパスですわ。
1ページめくるたびに、少しずつ謎が解けていく感覚がワクワクするんですよね!!
そう。小説ではページの中で、言葉を使って謎解きをしていくのです。言葉を使って読者に情報を与えていく。一つでも情報がかけたら、こんがらがっちゃうから、かなり直接的に言葉に表すのが特徴です。言葉だからできることですよね。
「赤いリンゴが一口かじられて、床に転がっている」
と言われたら、みんなきにするのは赤いリンゴだけで、
「床はフローリングかな?タイルかな?」
なんてことは気にしない。それが大事なんです。
これを映画で成し遂げたのが、ヒッチコック。
例えば、監視カメラの映像で赤いリンゴが一口かじられて転がっていたとしても、それが一口かじられているのかどうか、それがリンゴであるのかどうかさえも、気づくまでの時間はかなり個人差があります。気づかない人もいます。
巨大スクリーンの中で、全員の視線をその赤いリンゴ、しかも一口かじられているところに集める必要があるのです。
一見、簡単そうですよね?
クロースアップで、赤いリンゴのかじられてる部分をよりで取ればいいじゃないと。
それが、意外と難しい。しかも自分が撮影している側になると、それに注目しなくちゃいけないのはわかってるから、目線は自然とそこにいくのですが、視聴者はそんなこと知りません。初めて見る映像でどこを見るかなんて、ひとそれぞれ。
ヒッチコックがやってのけたことは、一言では語れません。
・照明;人は明るいところに目線が行く。
・カメラ;カメラが動くと人の目はその動きに吸い寄せられる。
・ブロッキング;下からのアングルは、存在の大きさを感じさせる。
・編集;人が次のフレームで起きることを把握するには3フレーム準備がいる。
まるで、科学者のように映画を一から見つめ直しています。これが正解かどうかは、その映画自体にしかわかりませんが、確実に傾向として、またメソッドとしてこの技術は適応されるべきものではあります。
この映画を見たらわかると思いますが、
主人公ロジャー・ソーンヒルがとる行動の前には必ず、なぜその行動をとるのかという、話ののり付けのような部分があります。しかもそれは、台詞で語られるのではなく、視覚的にスクリーンに映されるのです。
有名なシーンで、荒野でキャプランを待つシーンがありますが、あそこはまさにビジュアルストーリーテリングです。全く台詞を言わずとも、物語が進んで行くのは本当にすごいことです。
とくに前半から中盤にかけてサスペンスを盛り上げていく部分で、絶対にかけてはいけない部分をまったく欠かさない。しかも100人いたら100人が理解できるほど明確に。
まさにMASTER。
ISHIBASHI秋のヒッチコック祭りが始まりましたー。