「ジャン・ギャバンはかっこいいす」望郷(1937) あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャン・ギャバンはかっこいいす
1937年フランス映画。94分。数年前に知り合いから「これは俺の一番好きな映画だ!」と言われてプレゼントされたのがこの映画。それをようやく最近、観る気になったわけでございます。
「これが一番!」と勧められる映画を観るのになぜか億劫になってしまう自分がいます。それは多分、観た後にあまり好きじゃなかった自分がいた時に、その感情をその人の前でうまく対処するのが苦手だからだと思います。(リアルには「ジャン・ギャバンかっこいいす」とか言ってごまかした記憶が。)
いずれにせよ、本作をようやく観ました。そして安心したのが、ジャン・ギャバンは確かにかっこよかったこと。目つきはワイルドで、表情はデリケート。このアンバランスさがこのお方の最大の魅力だと思いました。(今の俳優だとラッセル・クロウの雰囲気が近いと思います。)
内容は、フランスの港町に姿を潜めている犯罪者の男と、それを追う警察の対決物語。とても男臭い映画ですが、昔の日本映画のように風をきって歩くようなタイプではなく、どこかお洒落にキメているところがやはりおフランスならでなといったところでしょうか。
男はながらく逃亡しているうちに、かつて住んでいたパリの心象をある女との出会いをきっかけに蘇らせる。そして、それがエンディングの悲劇につながる導火線になってしまうという按配です。
どれだけ人は強がってもやはり弱い部分があるものなのだと思いました。理性でコントロールしようにも、煌々と心のなかで輝く故郷にたいする憧れを捨てられるほど、わたしたちの心は非情にはできていない、ということなのでしょう。それでも人は強がらないと駄目なときだってある。
そんな荒廃した男の心情を、語らせることなくうまく本作は描いていたと思います。そして、ジャン・ギャバンはその役を見事に表現しています。現代の映画ほど大がかりにドラマチックでなかったのが、古典であるがゆえの貫禄といったところでしょうか。
この時代の作品をもっと観れば、もっと素朴な幸せが見つけられそう。
せっかくプレゼントしてもらったDVDだから、これからまた何回も観ようと思っています。感謝。