「ペペ・ル・モコの心象風景等の描写が不足過ぎ」望郷(1937) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0ペペ・ル・モコの心象風景等の描写が不足過ぎ

2020年7月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

何十年ぶりかで再鑑賞。
デュビビエの代表作のように言われる有名な作品だが、「舞踏会の手帳」や「巴里の下セーヌは流れる」に比べてあまりに描写不足で入り込めなかった。

まず、ペペ・ル・モコの行動があまりに身勝手で奔放過ぎ、なぜ部下たちが従順に彼に従っているのかが解らない。
多額の報酬なのか、ボスからの恐怖心の植え付けなのか(この映画ではそうは思えないが)、またたとえばゴッドファーザーのヴィトーコルレオーネのように家族や慕う人々への強い包容心の結果なのか、この映画では彼のボスとしてのカリスマ性の背景シーンがほとんど無いため(罠に掛けられた若い部下への思いやりのシーンこそあったが)、ギャバンでなければただの兄貴分のチンピラにしか見えなかっただろう。

また、ペペ・ル・モコはパリ及びギャビーへの憧れの相互の影響し合いの結果、カスバを出て捕まるわけであるが、この場面でも仲間や愛人を放り出したままギャビーを唐突に追うばかりでペペ・ル・モコに共感するのは難しい。
したがって、有名なラストの“ギャビー”の叫びと自死のシーンも全く心に響かない。
全ては描写不足なのだろう。

もう少し上映時間を長くし、部下との関係やペペ・ル・モコの心象風景を丁寧に描くべきだった作品と思う。

Cape Godさんのような“優しさに裏付けられた深い人間洞察”とはいきませんが投稿させていただきました。

KENZO一級建築士事務所