劇場公開日 2021年4月23日

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「3つの顔をもつ魔女」ヘカテ タチアナさんの映画レビュー(感想・評価)

4.03つの顔をもつ魔女

2025年6月3日
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鑑賞方法:VOD

怖い

知的

処女、女、老婆の三つの顔をもつ魔女ヘカテー。運命の転機に現れるという。外交官ロシェルは赴任したアルジェリアで、魅力的で都合のいい愛人を手に入れたはずが、立場が逆転。三叉路にあるcafe durangoに現れる老女と彼女は実は同じヘカテー。ひっそりと佇む老婆の顔が、若いクロチルドに一瞬変わるシーンは映画のクライマックスといってもよいくらい、不気味で鮮やかだった。ヘカテーの3つ目の顔、処女は、冒頭のパーティーのシーンで、はじめにカメラが映し出す金髪巻き毛の童女だろう。クロチルドのお気に入りの少年イブラヒムに暴行したロシェルが中国に左遷され、遍歴の末最後にベルンでクロチルドに再会。ロシェルは年相応に老いたのに彼女は若いまま。そう、彼女は子供達を食って若さを保つ魔女なのだ。二十世紀のアメリカ人にしてはあまりにも古めかしいクロチルドという名は、彼女が実は魔女のいた中世から生き続けていることを暗示している。ラ・パロマでも魔女をテーマにしたダニエル・シュミット。流石、19世紀にも異端審問があり魔女の処刑があった国スイスの監督で、文明が届かない闇の領域を扱ったら天下一品。ただ闇に蠢く力が表面に出てくるのはほんの一瞬。だから、本作をみてもただのロマンス映画だと思っている人も多いようだ。

タチアナ